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眠りに堕ちてすぐ、夢を見た。 夢の中のあたしは、ちょうど今布団に入ったところで、 そういえばパソコンの足元の暖房を消しただろうか、 と、思っているのだった。 夢ウツツでそう思っているのではなく、 しっかりとした夢の中で、そう思っていた。 はっと目覚めて、ああ夢か、と思う。 パソコンの足元の暖房は、部屋の明かりを消す前に、 ちゃんと確認した覚えがある。 だから、消しただろうか、などと心配しなくて大丈夫、 そう思いながら、再びとろとろ眠りに就いた。 と、またも夢を見た。
今朝の夢。 手の甲に、ぺたりと張りついたセメダイン。 乾いてがびがびになったので、 ぺろーんと剥がす。 と、剥がしたところが、銀色に。 アルミのような、鋼鉄のような。 どうやらあたし、 実はロボットだったらしい。
風邪、ですか? オーダーを取りにきたシェフにそう言われて、あ、いえ、と首を横に振る。 その、ちょっと、二日酔いで。 ああ、と笑顔で肯くシェフに「珈琲を」と言うと、彼はそれ以上訊ねることなく、静かに厨房に戻っていった。 たしかに、ひどい顔だ。 天井までの大きな窓にぼんやり映りこんでいる自分の顔をそっと眺めて思う。境のはっきりしない曇天の空と灰色がかった海の上にうっすら浮ぶその顔には、生気がない。まるで心霊写真みたい。 でも実は二日酔いなんかじゃない。いや、ゆうべ
「この村の大切なものといったら、 もうこれしか残っていません」 そう言って、青年は白い包みをテーブルの上に置いた。 こんもりと柔らかな布の包みは、 かすかにひっそりとうごめいている。 青年の決意をこめたような口調に、 それは何かと聞きかえすこともできず、 わたしは黙って首を傾げ、 彼と同じように包みをみつめた。 ふたりの視線に応えるかのように、 白い布が、ゆっくりと静かにほどけていく。 現われたのは、仔馬だった。 体長40センチほどの、 小さな小さな、白い仔馬だった
前回「朗読して頂きました。再び」に書いた、拙作のうちのひとつ、「水琴窟」。これ、いつ書いたものだっけ(なんでも忘れてしまう)とPC蔵をひっくり返したら、ありました。 たしか2002年頃、「ブログっていうものがこれから始まるから、お試しで使ってみて」と声をかけて頂き、怖々始めたその「ブログ」に日々書いていたエッセイのような詩のような日記のようなものの中に。(なので文中の「ミメオ」は我が夫のことです。朗読して下さるときは「夫」と変換されてます) で、「このブログを本にしましょ
朝刊を取りに行こうとドアをあけたら、 あたりがにわかに霞みはじめた。 リビングのカーテンをあけたときには、 澄んだ晴天だったはずなのに。 おかしい、と思いながらポストをあけると、 新聞がない。 ははあ。と思いつつ、 家に戻りリビングに行くと、 案の定、ソファに腰掛けて新聞を広げる者がいる。 こほん、と咳払いをすると、 がさがさと音をたてながら、 新聞を高くかかげて顔を隠す。 もう一度、ごっほんと腰に手をあてて言ってみるが、 ますます新聞に顔を寄せるばかりである。 しかたが