シェア
蝶が。 季節はずれの、揚羽蝶。 真っ白い花びらみたいな、翅。 広げると、5メートルほど。 ふわり、ふうわり。 向かってくる。 音もなく。 夢のように。 (という夢を見たのでした)
やけに明るい秋の午後。 いつもなら「夕焼けこやけ」の流れる時刻に、 妙に間延びした女の声。 「都合により本日の日没は中止となりました」 楠のてっぺん、 帰るに帰れぬカラスが途方に暮れて、 ひと声高くかあと鳴いた。
しぼしぼと降る彼岸でびしょ濡れの まくわうり売りからうりを買う まっぷたつ たぷたぷと溢るる甘露は雨の匂い 波間に遠く まくわうり売りが消えていく
小さなおばあさんだった。 親指ほどの。 埃まみれの棚の端から とことことこと歩いてきて、 ぽかりと空いた一冊分の 闇の奥へと入っていった。 掴んだ本を戻すに戻せず、 中途半端に掲げたまま、 ひとり、途方に暮れる午後。