マガジンのカバー画像

白日夢(写真と詩歌物語)

58
気になる詩歌・小説・随筆・言の葉に写真を添えて。
運営しているクリエイター

#創作

喰らう

浅漬けである。 残念ながら、あたしが漬けたのではなく、 買ってきたもの。 これで100円ちょっとである。 市場の八百屋の片隅に、 無造作に積まれて売られている。 漬け汁ごと、ビニール袋に入れられて。 商品名など、なにもない。 製造者と賞味期限が、シールでぺたんと貼られているだけ。 かぶは丸ごと、だいこんは鉈割り、 小なす一本、 にんじん、きうり、二分の一本。 土から抜いて、凍えるような水で洗い、 ざっくり切って、漬けただけ。 そんな浅漬け。

いつからか

かくれんぼは、 見つけてもらうために 隠れる遊び。 息をひそめ、身をかたくして。 見つかるもんか、と隠れるのは、 見つけてくれると、信じているから。 鬼ごっこは、 つかまるために、逃げまわる。 息をはずませ、身をひるがえし。 必死になって逃げるのは、 かならずつかまると、知っているから。 大声あげて泣きさけぶのは、 よしよしと抱きしめてもらうため。 あたたかな胸に引き寄せて、 誰かがきっと、守ってくれる。 疑いもせずに、そう思うから。 いつのまにか、しなくなった。 か