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白日夢(写真と詩歌物語)

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気になる詩歌・小説・随筆・言の葉に写真を添えて。
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2021年7月の記事一覧

喰らう

浅漬けである。 残念ながら、あたしが漬けたのではなく、 買ってきたもの。 これで100円ちょっとである。 市場の八百屋の片隅に、 無造作に積まれて売られている。 漬け汁ごと、ビニール袋に入れられて。 商品名など、なにもない。 製造者と賞味期限が、シールでぺたんと貼られているだけ。 かぶは丸ごと、だいこんは鉈割り、 小なす一本、 にんじん、きうり、二分の一本。 土から抜いて、凍えるような水で洗い、 ざっくり切って、漬けただけ。 そんな浅漬け。

午睡

どこからか小さく流れているテレビの音が遠くなり 縁側に置き去りの皿には赤い汁と薄緑の皮と黒い種 かたかた扇風機の羽の音に夢の走馬燈は廻りつづけ 微かな風と戯れて風鈴の金魚しどけなく尾を揺する                      ちり……ん