魔導仮名遣い

国立魔導大学本館303。俺の本日の主戦場だ。周りの連中もギリギリまで自作のノートや古代言語辞書と睨みあっていた。

「魔導言語学」。そもそもが新しい魔法関連の学問の中でもひときわ日が浅いこの分野は、古代都市の深部で発見された資料がきっかけとなって生まれた。それは現代において新エネルギーとして注目されている「マナ」の運用を想起させるもので、言語による制御という知見は学会を震撼させるには十分すぎるものだった。その後見つかった文献には複雑な配列の文字群とそこに振られた難解かつ長大なルビがあり、高度な体系化が行われていたと推測された。

つまり、他の科目と違ってこれの試験は知識もそうだが、何よりセンスが必要なのだ。

問題用紙を見る。1問目。無数の氷の粒を飛ばす絵だ。

「氷散弾-ショットガン・アイス-」

どうだ。

カンジは合ってるか?解答欄のマスが妙に余ってるぞ。

…俺は迷いを振り払った。本番は、ここからなのだから。

【続く】

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