母と娘の三味の音ひとつ涼しけり ある時期、日暮里に住んでいた。 仕事帰りに時たま立ち寄る飲み屋があった。 女将さんには20才代の一人娘がいて、「そろそろ年ごろなのよ」と、どうやら結婚相手を探している様だった。 暖簾をくぐるとその日はまだ客はおらず、奥の部屋から母と娘の三味線の音が聞こえてきた。
地球儀にかかる子の息風暑し 3歳になる孫が、地球は丸くていろんな国に分かれているなんてこと何歳になったら気づくのだろう。 いやそんなことはわからなくていい。 地球儀を見たら抱擁してくれればいい。
蜘蛛の巣や力んで悔やむことばかり いつも歩きに行く近所の公園にはプールがある。 長い間子どもの声もなく、水面を打つのは噴水だけだ。 空を見上げれば四、五羽のツバメ。 それをさらに上の方で窺っている鷹が二羽。 金網の向こうは、なぜか均衡が保たれているように見える。
空色に滲むことなき黄イッペー 家の前に一本のイッペーの木がある。 今年のブラジルの冬は厳冬だった。 その所為かどうかわからないが、春に入った途端に花々が満開を咲き誇った。
春昼やネットが落ちて早二時間 ブラジルでは結構な頻度でネットが落ちる。 原因は様々だが、一日棒にふった時もある。 その時はトラックの荷台が道路上の配線を直撃し、バシッという音とともに不通となった。まあ、原因がはっきりすれば良いほうだが。
夏の星三歳の子に手を引かれ