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コロナ禍の取り組み紹介 / 「自宅でできるデイサービス」 ~大田区通所介護事業者連絡会の試み~

こんにちは。ウェルモの上堀(かみほり)です。

緊急事態宣言の解除から約1週間となりますね。

今日は、大田区の通所介護事業者連絡会さん(以下、「連絡会」と省略します。)が新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の中で始めた取り組み「自宅でできるデイサービス」についてご紹介したいと思います。


取り組みを一言でまとめますと、

新型コロナウイルス感染症の影響で通所介護事業所に通えなくなった、もしくは通いを自粛されるご利用者が増えている中で、連絡会さんが「ご利用者の心身機能の低下を防ぐためにできることを」と考え、自主的に取り組まれたサービス

です。

緊急事態宣言が明けたとはいえ、依然として感染症への不安や警戒が続く中、今後の事業所運営のための「備え」について考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

全国の事業所の参考になる取り組みですし、なにより大変な状況の中でも「何か自分たちにできることはないか」、と前向きに一歩を踏み出された連絡会さんの姿勢に、励まされるお話だと思います。

連絡会の藍原さん、松橋さん、相川さんのお話をぜひご一読ください!


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藍原義勝さん (大田区通所介護事業者連絡会 会長)

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松橋良さん (大田区通所介護事業者連絡会 副会長 / 
株式会社スマイルクリエーション 副社長)

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相川貴志さん(大田区通所介護事業者連絡会 外部委員 /
 AIケアサービス株式会社 代表取締役 / 理学療法士)


- コロナ禍で、ご利用者のために何かできることがないか考え始めた

まず、この「自宅でできるデイサービス」がうまれた背景を教えてください。

藍原さん:
連絡会の仲間と具体的に相談を始めたのは、4月上旬でした。コロナの影響が大きくなってきていて、大田区内でも総合病院で感染が出たという報道があったり、名古屋の通所介護事業所に休業要請が出ていたり、私たちにもいつ影響が出てもおかしくない状況でした。

もしそうなったら、
 ・通えなくなったご利用者の心身機能は維持できるのか
 ・認知症の方の認知機能は維持できるのか
 ・ご家族の負担は大丈夫か

と、とても心配でした。


松橋さん:
2月に厚労省から、「通所介護事業所が居宅を訪問してサービス提供することが可能」という通達があり、4月7日には「電話での安否確認で介護報酬の算定が可能」という通達も追加されました。私たちは、この通達を、「往来とは異なる、遠隔(リモート)や訪問という手段で専門性を発揮し、ご利用者に切れ目のないサービス提供をしてもよいという指針を示してもらったんだ」、と前向きに捉えました。

そこで、電話での安否確認以上に、ご利用者の心身機能やADL低下の予防となる取り組みができないか、アイデアを持ち寄って議論し始めたんです。


- 通いができなくでも心身機能の低下を予防し、社会とのつながりを途切れさせない

具体的にはどういった取り組みなのでしょうか?

松橋さん:
通所介護事業所が、訪問や電話でのサービス提供へ切り替える場合に、「訪問時のサービス提供」や「電話での安否確認」と合わせて、『「自宅でできるデイサービス」 運動プログラム編』の冊子を使い、ご利用者に自宅で運動等をしてもらいます。

介護事業所は、ご利用者かご家族から実施内容をヒアリングして、所定の書類に記入し、担当ケアマネジャーに毎週報告を行います。書類の提出は事業所が行うので、ご利用者やご家族のご負担は増えません。4月27日から大田区内でこのサービスを開始し、緊急事態宣言が明けるまでに、19事業所が利用を開始しました。

相川さん:
口腔・嚥下訓練は、工夫すれば電話で確認しながらできる運動なんです。ただ冊子をお渡しして、「運動してくださいね」というだけは続きませんよね。自立支援の本質は、ご本人の力を引き出すこと。専門職が応援し続ける、関わり続けることに意味があると思うんです。訪問や電話連絡の時に、進捗の確認や取り組みの応援をすることで、自主的な運動を継続してもらいやすくなると考えました。

また、身体機能、ADLの低下予防だけでなく、電話を通じて、デイサービス職員との社会交流もできます。コロナ禍では外出自体を自粛し家に閉じこもってしまう危険性もありますので、外(社会)とのつながりを途切れさせないことも大事だと思っています。


冊子写真

(ご利用者にお配りしている冊子)


- 想いを共有し、一緒に有事を乗り越える

新型の感染症の拡大という誰も経験したことのない状況の中、不安も大きく、新しいことを進めていくのは大変だったのではないかと思います。取り組みを進める上で工夫されたことを教えていただけますか。

松橋さん:
プロセスで大事にしたことは、関係者への丁寧なコミュニケーションです。このサービスを利用する通所事業所には、必ず事前の説明会を受けてもらっています。ただプログラムを使うのではなく、一緒に有事を乗り越えていく仲間になることが大事だと思ったので、目的や想いをしっかりと共有させてもらいました。

また、区内全ての居宅介護事業所に、この運動プログラム冊子や帳票類をお送りし、ケアマネさん向けの説明会も開催しました。ケアマネさんのご理解や協力を得ることで、ご利用者へのよい形でのサービス提供につながるからです。報告内容に事業所ごとにばらつきが起きないよう、事業所からケアマネさんに報告を行う帳票類も様式を統一しました。


プログラム面ではどのような工夫をされたのですか?

相川さん:
誰でもすぐに活用できる形態がよいと考え、冊子の形を採用しました。ネットワーク環境や端末の環境で、使えない方がいたり、使うのにハードルがあったりする状況では、継続して使っていただくのは難しいと思いました。連絡会で冊子を作成し、事業所に印刷代のみ(380円/1冊)負担していただきました。ご利用者の負担はありません。

プログラムは、特殊な道具を準備しなくても自宅で実施可能な内容にしています。写真を豊富に使い、文字を大きくして、とにかく分かりやすくなるように心がけました。

大田元気体操

(冊子の1ページ。文字と写真が大きく、とにかく分かりやすい。
撮影は真夜中に行われたそうです。)


- 新しい取り組みから次に活かせる嬉しいフィードバックも

このサービスを利用した事業所やご利用者からの反応はどのようなものがありましたか。

松橋さん:
嬉しいことに、ポジティブなフィードバックばかりなんです。

通所介護事業所は、普段のご家族との接点はというと、送迎のときに少しお話するくらいしかないんです。訪問や電話に切り替えることでご家族と関わる時間が増え、そのことがご利用者の生活状況や環境を知る貴重な機会になっているようです。通常のサービス提供(通い)に戻った後でも、その経験が活かされるという良い反響を、利用した事業所からもらっています。

また、ご家族にとっても同様で、普段はご利用者を送り出したら、事業所でご利用者がどのように過ごしているのか、もちろんご報告はしていますが詳しくはご存知ないんですね。それが「うちのおばあちゃん、こんな風に笑うんだ」「こんなことできるのね」など、改めてご利用者のことを知る機会になったりしているようです。「スタッフさんの声掛けから、関わり方を学ぶこともあります」といったお声もありました。

それはとても嬉しい反響ですね。

iOS の画像 (2)

(ご利用者<右>と一緒に訪問で体操を行う事業所職員<左>
 / スマイルクリエーション提供)


- 大変なときこそ前向きに、自分たちにできることを考える

さて、全国的に緊急事態宣言が明け、第二波への不安や警戒はあるものの、6月1日から通常の通所サービスの利用を再開する方が多いかと思います。今後についてはどのように考えていらっしゃいますか。

相川さん:
感染症の流行が続くことを考え、自宅でもできることを増やしていこうと考えています。今回の取り組みは『「自宅でできるデイサービス」 運動プログラム編』なんですが、運動プログラムだけでなく、レクリーションや脳トレなど、他にもできることがあるんじゃないかと考えているんです。ですので、そのプログラムの準備はすでに進めています。

松橋さん:
感染拡大について気は抜けませんが、緊急事態宣言が解除され、6月1日から通常の通いに戻ってくださるご利用者が多く、ひとまずほっとしています。訪問や電話に切り替えていた方はスムーズに通常のサービスにも移行できるのではないかと思います。

コロナが今後どのようになるか分かりませんが、今回のこの取り組みで、通所の通常営業が難しくなったときでも切れ目なくサービスを提供していけることが分かったので、after/withコロナの中でもやっていけるかなという感覚を得ることができました。

やってみる前は不安が大きく大変でしたが、シンプルに自分たちの役割が明確になった機会であったと振り返っています。有事に悲観的になるのは簡単ですが、大変なときこそ、未来につながること、利用者のためになることを考え、皆が前向きになれる光を出していくことが大切だなと思いました。


■編集後記
常にご利用者への影響を一番に考える想いの強さと、専門性を活かして「利用者のためになることをどんな形でもやり遂げる」というプロフェッショナルの誇りを感じ、誰もが不安になる状況の中で光を感じられる取り組みだと、お話を聞いていて胸が熱くなりました。今後新型コロナウイルス感染症の流行状況がどうなるかは誰にも分かりませんが、このような前向きな姿勢や取り組みが広がっていくことを願っています。


※大田区介護事業所連絡会とは
大田区の通所介護・通所リハビリの事業者が集い、「顔が見えて本音で語れる仲間がいる 通所連」というスローガンのもとに結成して11年。現在は130を超える事業所が加盟しています。各事業所の質の向上と適正な運営のための取り組みをはじめ、保険者である大田区や様々な連絡会と連携を図り、大田区の介護保険事業における課題の抽出や解決へ向けた取り組みを実施しています。

※ウェルモの関わり
ウェルモは本活動を事務局として支援させていただいています。冊子の編集、事業所やケアマネ向けの説明会の運営、問い合わせ対応、広報支援などを行っています。

<本件に関する介護事業所からの問合せ先> 
電話受付時間:9時~18時
自宅でできるデイサービス事務局(株式会社ウェルモ内)担当:大図
Tel:03-6205-7309 
Mail:milmo_tokyo@welmo.co.jp

<会社情報・お問い合わせ先>
株式会社ウェルモについて: コーポレートサイト
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ご要望やお問い合わせ: 問い合わせフォーム

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ウェルモ広報担当 上堀宇花(かみほりうか)
食べることと、体を動かすことが好き。

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