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ごはんさんも私も無事でよかった

2月18日(日)
朝、目が覚めるとブータンが私の足を枕にして ぐーぐー眠っていた。口元が笑っているように見える。幸せそうだ。

ブータンが私のベッドで眠るようになってから、カカオは私の仕事机の後ろの椅子で眠るようになった。私としてはカカオといっしょに眠りたいきもちがある。以前は試行錯誤していた。でも、いまは あきらめて流れにまかせることにした。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」とあいさつをする。
暖かい そよ風が吹いた。

カカオとブータンにご飯をあげる。
ウーちゃんとルーちゃんに控えめにエサをあげて少しだけ水を換える。

今日も "こもれびの森" へ出かける予定。

出かける前、ごはんさんが昨日埋めてくれた車の穴の様子を見てくれる。完璧に塞がっている。よかった。

修一郎は寝ているので、お弁当を作って置いておく。

ぽかぽか陽気の中、しゅっぱーつ!

毎回、途中で何か買って車の中で食べる。ピクニック気分で。
今日は、うどん屋さんに寄ることにした。外食だ。少しずつ慣れてきた。どこのお店にも白ご飯と塩はある。

ご飯さんは具がたくさん乗っているうどんの大盛りと、鮭の おむすびを頼んだ。私は白ご飯のおむすびを ふたつ頼んだ。温かい おむすびでおいしかった。

「みるさん、足りなかったらコンビニ寄ってゆで卵とか買いましょう。」と、ごはんさんが言ってくれた。おむすび ふたつで おなかいっぱいになった。

こもれびの森に到着。
用事をする。ぽかぽか明るい日だった。ごはんさんが「お散歩しましょう。」と言ってくれて、胸が躍った。

鹿の足跡が残る道を歩く。ぽっかりと明るい木漏れ日の美しい林に出る。

背の高い木々が すうっと空に伸びている。川がある。水はほとんどない。雨が降ると水が流れるようだ。足元は鮮やかな黄緑色の苔で覆われている。きれい。つやつやしたシダも美しい。ひんやりとして みずみずしい空気。

うっとりしながら歩く。とても楽しい。
大きな白梅の木が優しくこちらを見ている。

用事を終え帰るとき、ごはんさんが

「山つきの、あの おいしいお米買いに行きましょう。」と言ってくれた。

またまた胸が躍る。そのお米は本当においしい。真っ白で、炊きあがると ぴかぴか輝いてなんとも言えないいい香りがする。ぴんとしていて、ものすごく澄んだ味がする。きれいな空気ときれいな水で育ったお米だ。

ウキウキしながら しゅっぱーつ!

このときは、このあと、こんなにびっくりすることが起こるとは思いもしなかった。

山道を走る。
「もののけの道だね。」と言いながら。

車の中では、ごはんさんが色々なお金を受けとってくれないので、なんとか受けとってもらおうと説得していた。

そのとき、山の中から突然すごい勢いで、ものすごく大きな猪が飛び出してきた。もののけ姫に登場するオッコトヌシみたいだ。毛は硬そうで白っぽい。

絶対に完全に真正面に思いっきり当たる…!と、思った。

猪は至近距離。牙も見える。私はびっくりして、

「きゃーっ!!」と言って両手で顔を覆った。ので、この間何が起こったのか全く分からない。

ごごっ というような音がしたけれど衝撃は感じなかった。車がブレることもなかった。当たったんだろうか?すごくドキドキした。顔から両手を離して目を開ける。ごはんさんの方を見る。落ち着いている。何事もなかったかのように車を走らせている。

「当たりましたね。」と、ごはんさんが普通の感じで言った。

「当たった?コワくて見ていなかった。」と、私。

「猪と車、両方大丈夫?」と、聞いてみる。

「猪は大丈夫だった。だいぶ減速できてたから。車は分からない。大したことないと思うけど。」と、ごはんさんが言った。すごく冷静でびっくりした。

さっきまで話していたことが吹っ飛んでしまった。

「すごく大きかったですね。」と、ごはんさん。

「うん、オッコトヌシみたいだったね。」と、私。

しばらく猪の話をする。車を停めれるような場所があったので、停めてみる。
降りて車の前を確認する。
助手席側の端の方に泥がベッタリくっついていた。擦ったようなキズがあった。へこんではいない。

「キズがついちゃったね。」と、私。

「大したことないですよ。しょうがない。気にしません。直せます。」と、ごはんさんが言った。

車に乗り込んで発進。

お米を販売している農家さんのお家にたどり着く。深い山の中にある。きれいな棚田で大事に育てられたお米。ごはんさんが1袋、私が2袋買った。
ここにも猫がいた。

お米を乗せて帰路に着く。

あんなに大きな猪が車にぶつかるなんて初めての経験だ。
ものすごくびっくりした。ごはんさんが ずっと落ち着いていたのにも、とてもびっくりした。何か起こったときの判断や行動の的確さにいつもびっくりする。

私が運転していたらどうしただろう?ハンドルから手を離して両手で顔を覆っていたかもしれない。

ともかく、ごはんさんも私も猪もみんな無事でよかった。車はキズがついてしまったけれど、へこんだり壊れたりしなくてよかった。ふぅ。

家に帰り着く。
修一郎が起きていたので猪の話をする。びっくりしていた。「みんな無事でよかったな。」と言った。そして、ごはんさんから修一郎へのプレゼントを渡す。喜んでいる。よかった。

ごはんさんが炭に火を点す。きれい。そして素敵なぬくもりを味わう。ぬくもりを味わっているうちに「何か焼こう。」ということになる。

家にある食材を持ってきて焼く。アスパラとか、椎茸とか、カリブロとか、さつま芋とかいろいろ。

暗くなった。
雲が空一面を覆っていて星も月も見えなかった。墨色の空が家々を風景を包んでいる。繭の中ってこんな感じなのかな。と、ちょっと思う。

家に帰ると修一郎は寝ていた。

夜、庭に出る。
雨が降っている。クローバーに乗った雨の玉が玄関灯に照らされて宝石みたいに輝いている。きれい。夜のぜんぶに「おやすみ。」を言う。

カカオは私の後ろの椅子で眠っている。ブータンはベッドの上で眠っているんだろう。

今日はびっくりした。みんな無事でよかった。感謝のきもちが胸を満たす。

今日もいい一日だった。


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