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みんな優しい

7月3日(水)
ピンポーン。チャイムの音で目が覚める。
急いでエプロンをかぶり、「は〜い!は〜い!」と叫びながら、よろよろっと玄関へ走る。

クロネコヤマトのKさんだった。

「寝起き〜〜。」と、私。あははと笑うKさん。

荷物を受け取る。

「駐車場、広くなった?」と、Kさん。

「うん、ごはんさんがクローバーめくって広くしてくれたの。いつでも車 停めていいよ。」と、私。

あははとKさんがまた笑った。

空を見あげる。白い雲が ぷかぷか浮かんでいる。可愛い。空を泳いでどこへ行くんだろう?朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。

カカオにご飯をあげる。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげる。

電話が鳴った。
N事務所のFさんだ。書類を持ってこれから来てくれることになった。

お話をする。
Fさんはとても誠実な人だ。

仕事をする。下絵を描く。
カカオがラフの上に乗ってくる。きゃー。

注文分の絵本を梱包する。

食事の支度をする。

アイスクリームを食べて仕事に戻る。下絵を描く。

夕方、梱包した絵本をポストに出しに行く。てくてく歩く。暑い。すごく暑い。とろけそうだ。お散歩には行かないで、ご近所の Uさんのお家へ行く。

「こんにちは〜みるで〜す!」と玄関で叫ぶ。

ガラガラっと引き戸を開けて Uさんが顔を出した。私の顔を見てびっくりした表情をしている。

「わっ!みるちゃん、みるちゃん。」と言って手を握ってきた。どうしたんだろう。

「この前、広報に載っとったやろう。表彰されとったねぇ、会ったら おめでとうって言いたいなって思うとったんよ。わざわざピンポン鳴らして ”おめでとう” 言うのもなぁって思って。おめでとう、おめでとう。」と、言ってくれた。

「ありがとう。」と言って ふたりで笑う。

尋ねたいことがあったのでそれを話す。すると、それは Uさんのお隣の KOさんに尋ねなくてはいけないことだと分かった。

「じゃ、KOさんとこ行ってくる〜。」と言うと、

「私もいっしょに行く。」と、Uさんが言った。

ふたりでお隣の KOさんのお家へ。

尋ねたいことを話す。
暑くなった話やグリーンコープさんの話をする。

てくてく歩いて家に帰っていると、車からWさんが降りたところだった。Wさんはもうすぐ90歳。すごく きれいだった。髪を染めてセットしてもらったようだ。

「どう?みるちゃん。きれいになったろ。」と、Wさんが笑う。すごく素敵。

「ますます きれいになりましたね!」と、私。

家に帰り、廊下で無造作に横たわっている 大きな撮影用の照明を小屋に運ぶことにする。軍手を忘れていた。手をちょっとだけケガした。引き出しを開けるとキズパワーパッドがなかった。買いに行く。

すごく暑い。マーチのエアコンが まぁまぁ効いている。よかった。
「大好きよ。いつもありがとう。」と、ハンドルを なでなでする。マーチは初めて自分で買った車だ。その前の初めての車パオは両親が買ってくれた。どちらも大切な車。

無事キズパワーパッドを買って帰る。

庭仕事をする。クローバーがずいぶん枯れて小さくなっている。隙間がたくさんできている。ちょっとせつなくなる。もくもくとドクダミを抜いてゆく。

きゅうりさんがやってきた。
おしゃべりする。私のスイカのポーチを見て、

「みるちゃん、スイカが下がっとうやないね。」と言った。

「うん。」と、私。

「可愛かね。ちょうど食べれそうやん。」と、きゅうりさん。

スイカのポシェットを両手で持って「ぱくっ。」と食べる真似をした。

すごくウケた。え。そんなにおもしろかったかな。

「みるちゃん、スイカ、食べれるよ。」と、また きゅうりさんが言ったので、私もまた

「ぱくっ。」と言って食べる真似をした。

またすごくウケた。
ちょっといい気分になった。

今度は T兄さんがやってきた。

「これ見て。」と、T兄さんがスマートフォンの画面を見せてくれた。

そこには、豪快な笑顔が目を引く布袋さんの木彫刻が写っていた。肩には小さなネズミが乗っている。はっとした。

「これ、義理父の作品です。」と、私。まちがいない。こういうタイプの作品は初めて見たがこの笑顔は義理父の彫刻だ。

「えっ!」と、T兄さんはびっくりして真顔になった。

実は Tさんは数ヶ月前お亡くなりになった。T兄さんは ときどき片づけにみえているのだ。

「これ、どうしようかと思ってた。」と、T兄さん。

「引き取りましょうか?」と、私。

「いや、さかいさんの義理のお父さんの作品なら私が床間に飾らせてもらう。」と、T兄さん。

「ぜひ、そうしてください。義理父も喜びます。」と、私。

「実物、見ませんか?」と、T兄さんが言ってくれた。

「ぜひ見たいです。」と言って、お家にあがる。

見せてもらう。想像より大きかった。あぁ、まちがいない。これは義理父の作品だ。彫が深く力強い。義理父が少し若いときのものだ。とてもいい。

「サインとかあるかな?」と、T兄さん。

「底に彫ってあると思います。」と、私。

T兄さんが「うんしょ。」と言って重そうに傾けた。頭を下げて私が見る。”境 貢” と彫られていた。

T兄さんと外へ出たとき、にりんさんとレトリバーのアランくんがやってきた。ふたりで道の真ん中にしゃがみ込んでいる。どうしたのかなと思っていると、

「アランが飛びつくとあぶないから端に避けて〜〜。」と、にりんさんが子供みたいに首を振りながら言った。

家に入る。修一郎が起きてきた。
食事の支度をする。

夜、庭に出る。
真っ暗。真っ暗な中 じっと夜空を見ていると目が慣れてくる。たくさん星が出ている。北斗七星だ。久しぶりに北斗七星を見ている。胸が高鳴った。きれい。久しぶりに会えた友だちのように感じる。とてもうれしい。また毎夜のように星たちに会えるのが楽しみだ。夜のぜんぶに「おやすみ。」を言う。

カカオは遊びに出かけている。

今日もいい一日だった。


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