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植木屋さんとカレーと四つ葉のクローバー

12月10日(日)
朝、目が覚めると ぱちんぱちん と言う音が聞こえた。

あっ、植木屋さんだ。時計を見る。10時だった。また今日もいつの間にか目覚まし時計を止めていた。むくりと起きあがる。

顔も洗わず表に出る。

「おはようございます!いらしてたの全然気がつかなかったです。いま起きたんです。」と言うと、植木屋さんが「ははは。」と笑った。

植木屋さんは8時前にみえて剪定を始められたそうだ。

ごはんさんが庭に出ていたので、あいさつしてちょっとおしゃべり。

家に入り、カカオにご飯をあげる。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげて水を換える。

植木屋さんが来てくれたときは、いつも仕事部屋の引き戸を開け放して植木屋さん用の小さなテーブルと椅子を置く。テーブルクロスの上にお茶を2本とガラスのコップ、ウェットティッシュを乗せておく。いつでも休憩できるように。

植木屋さんのお昼ご飯を用意する。
お赤飯を炊く。銀杏が入っている がんもどきを煮含める。ちょうど12時ごろ、ふかふかのお赤飯が炊きあがった。おにぎりにする。お皿に並べて黒胡麻を ぱらぱらと乗せる。

「お昼ですよ〜。」と、声をかける。

汗を ふきふきテーブルにつく。今日は、ぽかぽかの陽気だ。

剪定はお任せだが、ときどき「こういうふうにしようと思うけど。」ということを相談される。でも、お任せする。

わが家には色々な種類の木が ぎゅうぎゅうに植えられている。いつもお隣のキュウリさんのお家に枯葉がたくさん落ちるし、枝も飛び出している。でも、怒られたことがない。すごく寛大なご家族なのだ。

「いつもすみません、そっちに飛び出してるの折ってこっちに入れておいてください。」と言う。そして、みんなそうしてくれる。

しかも、私が庭仕事をしていると、「えらいね。」と言って、ジュースやお菓子をくれる。

早めに夕食の支度をする。
今日はカレーの予定。5年ぶりくらいだ。

修一郎がある日カレーを食べなくなった。それからカレーは作っていなかった。それが昨晩、カレーの話をしていると、「カレー、また食べてみたい。」と言ったのだ。

野菜とキノコと豆のカレーにする。ちょうど先月キュウリさんにもらったローレルがいい感じに乾燥している。久しぶりに作るので材料が少し足りなかった。ごはんさんが買いに連れて行ってくれる。

さつまいもを ふたつオーブンに入れて焼き芋にする。

3時になった。おやつの時間だ。
お茶と、どら焼きにする。ちょうど焼き芋が出来あがったので、ほかほかの焼き芋も出すことにする。

「おやつ食べてくださ〜い!」と、声をかける。

「どら焼きと焼き芋、どっちがいいですか?」と聞く。

「焼き芋。」と、言って笑顔の植木屋さん。

「じゃぁ、どら焼きは持って帰ってください。」と私。

植木屋さんが焼き芋が大好きだったことを知る。いろいろな場所で売られている焼き芋に詳しかった。焼き芋があるといつも買うそうだ。

もぐもぐ食べながら、

「これ、どうやって作ったん?」と聞かれた。

「オーブンで焼いたんです。」と、私。

「レンジじゃダメかな。」と、植木屋さん。

「レンジでは難しいですね。」と、私。

すごく気に入ってくれたようだ。

植木屋さんは普段、あまり喋らない。でも、焼き芋に関してはとても喋った。

そして、裏庭の杉の木ともみの木の話になった。かなり背が高くなっている。83歳くらいの植木屋さんは両方の木に上って枝を落としてくれる。

今回、とても茂っていて、この2本だけでかなり時間がかかるということ。来年の1月頃だと時間があるから、杉の木ともみの木だけ1月にしよう。ということになった。

帰りに植木屋さんに渡す お弁当を用意する。お昼に出したものをパックに詰めるだけ。そして、もう ひとつ さつまいもを焼く。

修一郎が起きてくる。

植木屋さんが来る日は庭に出たり入ったりする。
ごはんさんのところに80代のお客さまがお二人みえた。みんなで亡き義理父の彫刻を見る。そして、クローバー畑とりんごの木を見る。

一人の方が
「四つ葉のクローバーあるかな。探したいな。」とおっしゃった。

「たくさんありますよ。どうぞ探してください。」と、クローバー畑の奥に招く。

ごはんさんもいっしょに探してくれる。
私も探す。

その方がりんごの木を見て、

「クリスマスツリーみたいだね。」と言った。

「これ、ミニりんごの木なんですよ。」と、私。

「えぇっ!これ、本物?」と、びっくりされている。

「りんごの実がなってるの初めて見た。可愛いね〜。」と子供みたいな笑顔で喜んでくれた。

みんなで四つ葉のクローバーを探していると、植木屋さんも見に来た。

「何、探しよんですか?」と、植木屋さん。

「四つ葉のクローバー。」と、みんな。

植木屋さんは笑って仕事に戻った。

「あっ!これ、五枚葉っぱがある!」と、その方が声をあげた。

「五つ葉ですね!」と、私。

根元の方からそっと摘む。でも、どうしても四つ葉を見つけたいようだ。諦めずに四つ葉を探している。

もうないかな。と思いはじめた頃、

「あっ、これ四つ葉!」と、ごはんさんが言った。ぱちぱちぱち!

「〇〇さん、こっちこっち、これ、〇〇さんが摘んでください。」と、ごはんさんが声をかける。

「わぁ!ごはんちゃん、ありがとう。」と言って、すごくうれしそうにやってきた。

その四つ葉のクローバーは とても大きくてきれいだった。葉が まぁるくて大きさも揃っていた。(写真を撮り忘れたのでタイトル画像は前に撮影したものにした。)

そして、その方は、みんなが見守る中、根元から そっと四つ葉のクローバーを摘んだ。ぱちぱちぱち!

そして、車に乗って うれしそうに帰られた。

「ごはんさん、人のために探してあげてるとき、いつも見つけるね。」と、私。

「そういや、そうですね。」と、ごはんさん。

夕方になる。植木屋さんが帰る時間。今日だけでは終わらなかったので、また明日来てくれることになった。明日は雨のようだから早めに来て、雨が降る前に終わらせるつもり。ということだった。

「明日も朝、寝てると思います。」と言うと、

「よかよか。」と言って植木屋さんが笑った。

お弁当と、どら焼きと、あとから焼いたおいもを紙袋に入れて渡す。

軽トラックの後ろは葉っぱや枝で山盛りになっている。

ごはんさんと話していると、Oさんがやってきた。イルミネーションを褒めてくれた。3人でおしゃべりする。

暗くなったので、家に入る。ごはんさんにカレーをお裾分けする。
私はスパイス全部食べれないので、また味見しないでお裾分け。

修一郎も5年ぶりにカレーを食べた。ゆっくりゆっくり食べた。「おいしい。」と言っている。よかった。

夜、庭に出る。
寒くない。ほの暖かい。夜空が湿っている感じがする。水分を含んだベールをかけている感じ。空に星は見えなかったけれど、クローバー畑にりんごの木に降りた星はキラキラ輝いていた。夜のぜんぶに「おやすみ。」と言う。

カカオはいつもの椅子の上。

今日もいい一日だった。

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