お粥やの物語 第2章1-1 「夕飯が一杯のお粥では、物足りない気がします」
僕は歩を進め、店の前に立った。
三メートルほどの間口に、四枚のガラス戸が行儀よく並んでいる。
よく磨かれたガラスは乳白色で、店内の様子は窺えない。雨で湿った暖簾が、重そうに夜風に揺れていた。
お粥か……。
最後にお粥を食べたのは、小学四年生の冬、風邪で寝込んだときだ。母が用意した真っ白なお粥の上で、祖母が作った大きな梅干しが一つ、ゴロンと転がっていた。
お粥は嫌いではない……。
でも、お粥は体調が優れないときに食べるもので、元気とは言わないまでも、大きなリュックを背負うだ