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ひとりでお湯に浸かりに来た 1日目

こんばんは〜

今(5月22日現在)、福島県会津若松市に来ている。
お湯に浸かりに来た。

遠くに行きたい気持ちが常日頃からあり、予約をしないとなんだかんだ言って行かない日々を過ごしそうだったので、深夜2時に思い立って美容室の予約を取るような軽い指で、行ったことのない遠くの宿の予約を取った。
今番頭さんに敷いてもらった布団の横で文章を打っている。

この予定のためにお仕事をお急ぎモードで進めたので、そして愚かなり寝る前に金色のガッシュ(完全版)を読み進めてしまったので眠ったのは朝の5時。 フォルゴレかっこいい
その後2時間半後に起床し、眠った脳で家を出た。

東京駅から郡山駅まで新幹線で1時間とちょっと、iPadを持って来ていたので練習がてらいじっていたらあっというまに郡山駅についていた。
しっかり領収書と通常の切符を入れて一度弾かれる儀式をしたのち、特急券と取り替えて外に出る。
Google mapが次に乗れと言っている乗り物が、電車なのかなんなのかが分からなかったので駅員さんに聞いた。これはバスですね、階段降りて右側に乗り場があります、と教えてくれたはいいものの、バスにも種類があるみたいで…
普通のバスと高速バスが何本か止まるでかきターミナルの真ん中で何も分からなくなってしまい、まあ次の時間のに乗るか…と思いながらウロウロしてやっとチケット売り場を見つける。
ここに行きたいんですが…と伝えるとチケット売り場のおばさんが残念そうに「1時間後のしか…ないのよね」と教えてくれた。「ほんじゃそれを…」とひとまずチケットを買い駅に戻りドトールに入ってタピオカミルクティーを飲んで待つ。(久しぶりに飲んだらうめ〜)再びiPadのお稽古をしながら時間を潰す。

その時に描いてた絵↓

大人になってから「1時間」という単位がメチャ短し単位のように感じる。人と待ち合わせても1時間くらいなら全然待てちゃうかも。だから私が遅れたときもそうして待っていてください。と言いたいけど他人の意思で生まれる1時間はきっと長く感じるんだろうな。
あっという間にバスに乗る時間が近づき、賢き私はATMを探しあらかじめ現金をおろし、お手洗いも済ませて高速バスに乗り込むことに成功した。

郡山駅前から会津若松駅前まで、またバスで1時間と少し。乗り過ごしが怖いので目をつぶったり開けたりして到着を待った。

着いた あかべこの横にスイッチがあったが何が起こるのか分からず怖くて押せなかった

次にGoogle mapに乗れと言われているのは周遊バスの「あかべぇ」。30分ほど間が空いたので歩いて5分ほど先のファミマへ向かい、持ってきていなかったファンデとハブラシ、化粧水等のお泊まりセットを買うことに成功し、またちょっと歩き、あかべぇに乗り込む。

ほんまにそう

そこからは15分くらい乗れば予約した宿に着くのだが、周遊バスの1駅はちょろいっしょと思い、歩きたい気持ちもあったので1駅前で降りて歩く。

道路沿いのフェンスに穴が開いていると思ったら観音さまがいた 右手に徳利、左手に盃を持った伏見観音

川の流れる音が聞こえる。一本道のゆるやかな坂沿いに、温泉宿が並んでいる。
途中で美しき廃墟のような建物を見つける。

「東山ハイマートホテル」の駐車場らしい。廃墟じゃなかった。少し先を歩くと東山ハイマートホテルの本体があった。

名前の部分は消してます ここは裏口ではない


正面が異常に暗い。神様から太陽光を取り上げられた神話でもあるのかと思ったが、予約客の名前が4つほど見えた。1人で乗り込むにはちと勇気がいるが、ここもまた、よさそうですね…

そこからまた少し歩き、予約をした「会津東山温泉 向瀧」に到着する。

ヒェ〜

建物に入るとすぐ番頭さん?が挨拶をしてくれて、荷物を持って案内をしてくれた。写真をちらっと見たくらいで予備知識もないので、大事な情報や〜と思い真剣に聞いた。
「きつね湯」「さるの湯」「貸切家族風呂」と3種類の温泉があり、そのうちの「貸切家族風呂」はなんと3つもあり予約制でもないので空いていたら入れるらしい。
本日泊まる部屋の中に案内してもらいお茶を淹れて持ってきてくれるとのことだったので、あたりを見回しこんな素晴らしき場所に自身がいることへの自覚レベルを高めながら待つ。心で自分の頭を撫でに撫でた。

これこれこれこれこれこれこれこれ
東京の物件にもあのスペースこと「広縁」を標準装備してくれ 頼む

その後部屋を担当してくれる女性が(仲居さん?っていうんですか?)お茶(とか言いつつガチ抹茶だった うますぎる)と羊羹(手作りらしい うますぎる)を持ってきてくれて、食べながら説明聞いてくださいねと言ってくれたのでパクパク食べながら宿に関する説明を聞いた。
聞くなら今しかない、と思い写真をSNSなどにアップしてもいいかと、写してはならない場所などはないかの確認もさせてもらった。
そして…

晩御飯の18時まで自由時間がはじまった!
GO!と言われた犬のように部屋を出る。まずは館内をちと歩かねば気が散って仕方ない状態だったので、いつでも風呂に入れるように道具を持って早速歩きを開始する。

え…?
ここに今自分がいるってマジですの…?
うそかも…
ばあちゃんちにあるカレンダーの写真の中に来ちゃった…?

さすが文化庁の登録有形文化財に登録されている建物…
湯川の横っちょの斜面に建てられているので、 とにかく細かな階段が多い。階段大好き。

左が私が泊まった桔梗の間に続く階段。手前にも階段があり、さらにその奥にも別の客室に続く階段がある
移動するたびに目線の高さが変わり、目に映る光景に飽きることがない
右側に曲がると桔梗の部屋 そして左奥にもまた階段が数段あり別の部屋がある

案内された時に歩いた1階の長い廊下とは違い、上に上がると短い廊下が短い階段でたくさん繋がれているような入り組みパラダイスで、私はそういった構造が大好きなので…ひどくうれしい気持ちになりました…
チェックイン開始の15時からはそんなに時間が経っていないので、まだ他のお客さんを見かけていない。きっとこれからみんな来るんだろう。
ある程度歩いてキョロキョロしたのち、早くお風呂に入りたい気持ちも恐ろしく巨大になってきたのでその気持ちを宥めつつ向かうことにした。

貸切の家族風呂に着く。3つとも空いていた。他に複数人で来ている人を混雑する時間に待たせるのも良くないと思って先にここに来たが、正解だった…
誰もいないことをいいことに3つともチラリと中を覗いて、ひとつ気になる部屋を選んだ。一人きりで入れる風呂を3つの中から選ぶって何?富豪のマサラタウンに来たんだ…こんな選択肢をくれるオーキド博士だったら一生着いていく。贅沢すぎて少しクラッとした。

湯の入った窪みがど真ん中にドンとある「蔦の湯」を選んだ。

天井の高い、細長い脱衣所 内鍵付きの扉に各浴室の名前が一文字書かれている 渋すぎ
ガラスの引き戸の向こうにある、私だけの風呂に浸かる期待に満ち満ちた脱衣所

ひとまずまだ服は脱がずに、もう一度浴室をじっくりと見る。

明るい外の光で湯の表面が光りながらゆらめている
特徴的なタイルが美しい
なんか壁にあった謎の四角い窪み 蛇口がついてる これなんだろう
右側から水を入れて湯の温度を調節出来る

私が毎日東京で朝晩ヒィ〜ンとしている間にも、この空間は存在して、朝晩絶えず豊かな湯が流れている。その現実がガラスの引き戸を開けた瞬間に、湯気と共に優しく突きつけられた。希望じゃんねそんなの?!

完全放流式の源泉かけ流し

空間が美しすぎる。ひとりのためのお湯の空間。神様になっちゃった?
いつまで経っても服を脱げない、まだ心の準備が出来ていない、きっとどんな芸能人に会った時より興奮している、本当にこんな場所がある?いや無い…目の前に現実があるのに、疑いが晴れるまで服を脱げなかった。疑う必要なんてないのに…

ここに座って体を洗います

やっと落ち着きを取り戻してきて、通常の入浴の作業を始めることが出来た。
お湯がなめらかすぎる。プリン以上になめらかという言葉が似合うお湯、ベストなめらかニスト…なめらかという言葉をこのお湯に差し上げます。
シャワーなどはないので、風呂桶を使って湯を汲み頭と体を一通り洗い、お湯に全身を浸からせる。熱すぎずいくらでも入れちゃうような丁度いい温度。広がる地面のタイルが目の高さまで下がってきて、さっきまで見下ろしていた空間と別の場所に降り立ったような感覚を得る。

真ん中の大きな蔦の彫刻だけでなく、周りの飾りもかっこいいんだ

天井を見るとここは蔦の湯なので蔦の大きな彫刻が見える、やっぱデカいってかっこいいよな。
まだ日が昇っているので大きな窓から入る優しい光で風呂の部屋のすべてが満たされている。窓の少し開いた隙間からは鳥の声が聞こえる。
風呂のなかの水色のタイルと放り投げた自らの足が、掛け流しのお湯で揺らいでいる。

底の4辺と角っこはタイルが切り替えてあり、なだらかになっている

風呂のことは前から好きだったけど、これ以上好きにさせないでほしい、何かが狂うから…

ひとまず体が温まってきたので、名残惜しい気持ちを大きなバスタオルで拭いて浴衣に着替える。羽織もある。勝ちだね。

晩御飯まで少しだけ時間があるので、また少し館内を冒険した後興奮が冷めないうちに絵を描いた。

18時になったので仲居さんがご飯を運んできてくれた。タピオカミルクティーだけで動いてきた体はご飯を求めすぎていて、お皿が並べ切る前に腹の音が聞かせてしまいそうで少し恥ずかしかった。

なんかの祝い事かってくらい豪華 急にお正月がきた?

鯉のたたきや鯉の甘煮、春の山菜や紅鱒の蒸し焼きなど山の幸豪華メドレーがスタートした。
大きな鯉の甘煮は、食べきれなかったら持ち帰り用にきちんと包装してくれるそう。
鯉を食べたのは初めて、もしくは記憶が無くなっているので超ワクワクしながら食べた。甘煮は絶対無限白飯編になるくらい味が濃いめで、骨まで食べられるくらい柔らかい。
ご飯はこのあとおひつで登場する。(大御所芸能人感があってよかった)

途中に登場した椀物「焼き椎茸とよもぎ麩のお吸い物」と、お凌ぎの「海津雑穀古代米」の香りが異常によさ過ぎて、香りトーナメント上位常連、強豪校同士の試合が始まってしまったので少し焦った…

強豪校①
焼き椎茸は香りオリンピックのメダルとして首から下げられていてもおかしくない
強豪校②
異常良質香りもち米 森でこれ食べてたら一発で敵に位置がバレるくらい香りが立っている
ちっちゃい火、うれし〜

このあと妖怪に生贄として食われてしまうのではないかというくらい、体が綺麗になっているし、お腹もいっぱいになっている。窓から見える中庭に大きな化け物がのそりと現れても、やっぱりね!と納得してしまうくらいには供物の心得を理解してしまった。

部屋から見える中庭の景色

しかしそんなことは起こらないのでお腹の落ち着きを待ち、他の湯へ向かった。

落ち着きを待っていたら夜21時になってしまった。混んでいるかもと思いつつ「さるの湯」へ向かう。ここは貸切風呂ではないので、すでに5人ほど湯に浸かったり体を洗ったりしていたが、私が浸かる頃にはぱらぱらとあがっていって最終的には1人でお湯に浸かることが出来た。
大きな窓があり本来であれば外が見えるのだろうけど、夜で窓も曇っているので何も見えなかった。これは明日の朝に入るべきだな…と作戦を練りつつ再び体を温め、一通り楽しんだのち風呂を出る。
扇風機が涼しい。この旅館に来る前に長く伸ばしていた髪を切ったが、きっとこのときのためだったんだと思う。適当にタオルドライしてほかほかなわたくしのまま、もう一つの浴場へ向かう。

やっぱりここにも階段がある 移動が楽しい

次のお湯は「きつね湯」。番頭さんから説明を受けた際に「44〜45℃の少し熱めのお湯です」と言っていたのでそれはアチーでさーな…と思っていたけどせっかくだからとチャレンジしてみた。
きつね湯の暖簾をくぐるとアレ…?なんだかとびきり暗い。思わず電気のスイッチを探すけど、見当たらない。誰もいない。入っていいのかな?と不安になるも人がいないならラッキーと思って早々に浴衣を脱ぐ。

引き戸を開けた先が想像出来なくて、心臓が早まっちゃう アトラクションだこれ〜

脱衣所が非常に暗い。ここも神様から光を奪われた場所か?と思い天井を見ると、他の浴場より電気の数とパワーが少ないので、外の光の入らない夜は暗くなるのだと分かった。
曇った大きなガラスに写る裸の自分が別人に見えた。もしかしたら別の世界軸の自分だったりして。それだったらもう少し痩せててほしいわな…

人もいなくて、少し薄暗くて、最高の場所

やはり人がいない場所はいいね…

ガラスの引き戸を開けると、弱めなオレンジの電気にうっすら照らされた、異様に神秘的に見える風呂が見えた。きっとここは裸にならないと入れない場所なんだ。いや、風呂は本来そうであるべきなんだけど、裸が正式的な装いであるということを空間に説かれているような気持ちになった。
やはり誰もいない。壁越しにある隣の男性側の風呂からもひとつも音がしない。
もう2度ほど体を洗っているので、簡単に流したあと恐る恐るお湯に浸かる。

漫画だったら「……っ!」の吹き出しがつくくらい息を呑んだと思う
湯が流れる音だけが浴室に響いている 足音を立てるのも躊躇してしまうくらいの静けさ
ここにも天井に彫刻がある かっこいい…

今、文章を書きながら向瀧のきつね湯に関してのページを見ていたんですが、

また、天井には国内産ヒル石で出来た彫刻が見られますが、この石は水分を吸収し湯気のしたたりを防ぐ効果があります。 

https://www.mukaitaki.com/spa/kitsune/

飾りだけでなくてちゃんと“そこにある意味”のあるもの、こういうのにめっぽう弱き自分ここにあり…

足をまず湯に入れて、怯えつつも底におしりをつけた。
あっち〜〜〜〜!〜〜??けど??これは……?!
我慢せずとも体が熱さを求めてどんどん沈んでいく。肩まで浸からせたあと体を動かさずじっ…とさせて一点を見つめていると、今まで入っていた湯とは違う温かみで体がくるまれた。顔の毛穴から汗が出はじめているのが分かる。静か。ひたすらに熱い。もう出ようかな…
体を動かすと新鮮な熱さがサテンの布のように体にまとわりついて来る。体がバグったのか、直後それがなぜか冷たく感じる…
何何何?と思いながら体を引き上げ外に出ると、全身の輪郭が、ッキュ!と締まった。はじめて“全身の輪郭”の存在を知った。何かにかたどられてしまった。これ以下の温度では感じ取れない感覚、熱々の金型で焼かれたベビーカステラの生地の気持ち、体と外気の境界にボールペンでくっきりと線を引かれたような…
脱衣所に向かったはずの足がまた湯船に向かっていて、気付いたら2度目の浸かりをしていた。癖になってしまった。1回でこの経験を終わらせてしまうには早すぎる。

物は試しでこの熱々のお湯に浸かってよかった〜と思いながらしばらく浸かったあと、湯船から上がり大きなタオルで体を拭く。脱衣所にはやはり誰もいない。

ひとりなので机を少し横にどかして、その横に布団が敷かれている

自分の部屋に戻るといつの間にか布団が敷かれていた。
明日の朝のお湯のために早く寝ないといけないのに、興奮を忘れないうちにすべてを文章で書き留めています。
もう0時半になっちゃった。
お湯のために寝る夜が私にも来た。旅はいいね。

熱がなくならないうちに2日目の日記も書こう、自分のために、落ち込んだ時に読み返すために…
きっとこの旅を思い出してハート0.5個分くらいの元気を得られると思う。
旅を繰り返すとこのような思い出し回復が何度も出来るのだな〜

寝よ〜っと

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