戦隊を見たことない人にこそ勧めたい「王様戦隊キングオージャー」
「シアターGロッソで僕と握手!」
かつて子供だったことがあるなら、このフレーズに覚えがある人は多いのではないだろうか(ちなみに私は「後楽園ゆうえんち」世代だ)。
今回は、アラサーもとうに超えた女が、この歳にして初めてGロデビューする羽目になった作品「王様戦隊キングオージャー」について、最終回を迎えた記念に書いておこうと思う。
タイトルに書いた通り、普段戦隊見てない人にも、というより見てないからこそおすすめできる作品だと思うので、これを読んで気になった人はアマプラで全話見れるんで見てください。多分今月いっぱいは配信されてるはず…
筆者の戦隊歴
ここからしばらくニチアサ思い出話、もといドンブラザーズの感想が始まるので、キングオージャー以外の話はどうでもいいんだよ!という人は次の章まで飛ばしてほしい。
昔からのフォロワーは知っているかもしれないけれど、私は大きなお友達未経験者というわけではなく、いわゆるニチアサ自体は結構見ていた。具体的には2010〜2014頃。ただしどちらかというとライダーとプリキュアがメインだったため、履修済みの戦隊はゴーカイ〜キョウリュウあたりまで。その中でも思い入れが深いのはゴーバスターズとキョウリュウジャー。
トッキュウジャー以降は生活リズムがニチアサと合わなくなり、記憶に残っているのはジュウオウジャーのゴーカイゲスト回ぐらい。あとルパパトはすごい話題になってたからうっすら知ってる。よくわからないまま、クリスマスにはシャケを食べてる。
ドンブラ最終回一週間前に突如復帰
そんな感じで、次に本編を見るのは子供ができた時かな〜と思ってたところに突如彗星のごとく現れたのが、「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」だった。色々と話題になっていた作品だけど、Twitterの感想を受動喫煙するだけに留まらず、本編まで見てしまったのは、周りの非特撮オタクのドラマ好きたちがこぞって見てたから。
とはいえようやく「見てみようかな…」と思い始めたのが年明けごろだったため、今から追いつけるのか?と不安になっていたところ…
あるじゃん!アマプラに!!
いつの間にかニチアサも配信時代にキッチリ対応していた。やった~これで追いつける~!
およそ10年のブランクがあったため、ピンクが会社員のオッサンじゃん!!とか、CGがこんなに気軽に使われているなんて!!とか思いながら新鮮に見られた。
(後になって、戦隊オタクにとっても色んな意味で新鮮な作品だったと知る)
そんなこんなで、最終回前の一週間で、寝てる時と仕事してる時以外常にアマプラを起動してなんとか追いついて迎えた最終回。
ばら撒かれていた伏線を特に回収せず、それでいて感情面ではしっかり大団円を迎える、という不思議なラストを見終わった後、流れた告知に私のセンサーが反応した。
「次の戦隊…なんかかっこよくない?」
ここからやっとキングオージャーの感想
※具体的なネタバレはあんまり書かないようにしたつもりですが、最終回まで完走した人間が書いている文章なので、ここからのネタバレ回避は自己責任でお願いします。
戦隊らしからぬ戦隊
本当に申し訳ないんだけども、私はちびっこの頃から特撮のスーツにそこまで興味がなく、だからこそニチアサファンは名乗っていたが特撮ファンではないと自認している。どちらかと言うとキャラクターやドラマ性を楽しみに見ていた。なんなら追っかけ視聴の時はバンクとか巨大ロボ戦とかは飛ばしてた。ごめん。
そんな私が初めて、キングオージャーのビジュアルを見て抱いた第一印象が「スーツがかっこいい」だった。
これはXでの聞きかじりだけど、白いパーツというか生地、がないデザインのスーツは初めてらしい。そんでもって特に惹かれたパピヨンオージャーはラベンダーっぽい紫色なのだが、これも恐らくお初。なんてお洒落なんだ!
そんなわけで「何か今までと違う雰囲気を感じる!」という理由で、次の週も朝9:30にテレビを点けた。
その結果…本当に今までと違う体験をした。
夏休み回含め毎週欠かさず見るほど大ハマりし、夏映画に行き、まさかの人生初のシアターGロッソに赴くことになったのだった。
キングオージャーのここが良かった
恐らく制作側も意識的に色々新しいことをしてたと思うんだけど、結論から言うと、それらが私にはがっちりハマった。ここからは良かった点をひたすら書き連ねたい。
キャストがみんな上手い
最初にうおっすげえ!と思ったのは一話で、ラクレスに対峙したギラくんが逡巡の末、邪悪の王として顔を上げるシーン。基本的に、最初の数話ってキャストみんな初々しさが残る感じで、その後の成長を楽しむのも醍醐味だったりするんだけど、なんかいきなり完成品出てきたぞ!て感じで度肝を抜かれた。
ギラ以外のメインキャストもみんな上手くて、全然引っかかる部分がなくてびっくり。
あとはラクレスとカグラギのベテラン枠が非常にいい仕事をしていた。
中の人がお二人とも大河ドラマ経験ありなせいか、時代劇っぽい芝居がかった演技が上手い。加えて、キャラとして腹の探り合いが多い立ち位置にしたのが、結果としてキャストの演技力が存分に活かされる形になって、良いドラマになっていたと思う。
キャラがめちゃくちゃ魅力的
戦隊メンバーの個々のキャラクターが既に素晴らしいんだけど、特に彼らが5つの王国を背負っている、っていう設定があるのも良かった。
序盤のチームワークがイマイチな戦隊って珍しくないけど、そのチームワークの悪さが即国際問題に直結するっていう作りが更に話を面白くしてるんだよね。
あとは本作独自の要素としてあった、側近の存在もデカい。どの国の主従もお互いのキャラクター性を補完しあい、かつひとりひとりに作品全体に流れるテーマが散りばめられていて素晴らしかった。全員分スピンオフほしい。
民衆はゲストとかモブで済まされがちなところを、レギュラーキャラを入れて引っ張っていたのも良かったね~。ゴローゲまさかお前、終盤にあんなに活躍すると思わなかったよ…。
キャラクターデザインがべらぼうに良い
キャラクターそのものだけじゃなく、そのデザインについても。
いやさ、他作品も好きなキャラいっぱいいるけどさ…デザインの観点で言うと、特撮のヘアメイクってどうしてもちょっとダサいというか…まぁ某アイドルグループみたいにそれが持ち味であり、良さでもあるんだけど。
今回は異世界が舞台ということもあり、バチバチに全身の世界観が統一されてるキャラが多くて完成度が一段抜けてたと思う。何よりもジェラミー。中の人のビジュアルもさることながら、頭からつま先まで全てのフォルムが完璧だった。まじで彫像では?
あと、これは言ってるの多分私だけなんですが、王様たちのデザイン、ちょっとCLAMPっぽくて好き。いつか描いてほしい〜
王様戦隊以外だとグローディが頭一つ抜きんでてたと思う。朝からあの設定とビジュアルの天野浩成は間違いなく劇薬。中学生だったらこっちが死体になるところだった。
政治劇要素
上でも少し触れたけど、王様を主人公にすることで、政治劇要素が絡められるの、大人としてはかなり楽しかった。1話からバキバキに国際連盟みたいなことやりだして、本当に戦隊か?とびっくり。主にラクレスとカグラギが担当してたので、ラクレス退場後の後半はちょっと薄れてきてたけど…
まあそんなふうに丁度、王同士の一触即発が恋しくなってきたタイミングではいよ、とお出しされたイロキの乱にぶったまげましたけどね。本当に神回だった…この回は大袈裟じゃなく、大河と並べても遜色ないと思う。
映像・決め台詞がかっこいい
とにかく、漫画で言うところの「決めゴマ」、歌舞伎で言うところの「見得を切るシーン」のクオリティがすごい。スチルか?URか?てカットがザクザク出てくる。毎週実写ドラマに対して「作画が良い~!!」と叫ぶことになるとは…
終盤にかけてはぶっちゃけ整合性より勢い重視のシーンも多かったけど、「場面の撮れ高」に振り切っただけの価値がある、素晴らしい映像だった。
それでもって、同じことが台詞にも言える。
ネット上でキングオージャー名乗り口上まとめ みたいなのあったけど、本当に何読んで育ったらこんなワード出てくるわけ?あっBLEACHか
単にかっこいいだけじゃなくて意外性と、リズム感、同音異義語などの日本語としての面白さも兼ね備えてて国語が上手すぎる。キングオージャーのお陰で、久し振りに日本語話者に生まれたことを感謝した。
一番好きな口上はリタ様の
かな。いや他のキャラの名乗り口上も、もうみんな好きすぎて選べないけど。
特に49話のラクレスの台詞は、それまでずっと本編で使われてきた「邪悪」「道具」の言葉の意味が180度反転する瞬間を見せられて感動した。
キングオージャー名言集出してくれたら買うんでお願いします東映さん!!
多様性描写
直接的に作品のテーマとして取り上げてない作品として、多様性描写は今の日本でトップレベルだったと思う。
今作、女性陣がみんな強いんだけど、それだけじゃない。老若男女、戦えない人もやれることがあって、誰も欠けてないからこその結果なんだ…ていう所、すごく美しかった。
最終回エピローグの、ジェラミーのナレーションにそれが凝縮されている。
ここで唐突に朝ドラの話になるんですが、大好きなドラマ「おかえりモネ」で以下のようなセリフがあって。
これだけだと訳分かんないと思うので、超ざっくり説明すると、幼馴染5人が大人になってから初めて本音を語り合って、あの頃の感情を共有して、いかにもこれから手を繋ぐぜ!!て流れの前振りがあって。そこで出てくるのが上記の「手なんかつながなくたっていい」っていうセリフなの。それに当時、目から鱗が落ちる思いだった。(ちなみに、これを経て終盤で再び手を繋ぐシーンがある)
今回のエピローグのナレーションはそこから更に一歩進んだ今の答え、て感じで嬉しかった。なかなかこれを言葉にしてくれるメディアってなかったから。
更に最終的にそれを「私たちに続く物語」にしてくれたのがもうね…最高かよ…
王様たち、それぞれ相手に歩み寄りはしてるんだけど、根本的な欠点は最終回以降も変わってないんだよね。
正直「後半になっても同じような理由でケンカしてるのかよ…」と思うこともあるけど、無理に変わらなくても、そのままでも手を取り合えるって、凄く素敵なことだなぁと思う。
色々突っ込まれてる点について
ただ褒めちぎって終わるのもアレなので、ちょっとだけ。
なんとなく後半に行くにつれ、賛否両論の空気は感じていたけど、私としては「指摘されてる点についてはわかるけど、そんなに気にならない」て感じ。
元々、戦隊の中でゴーバスターズが一番好きだった時点で異端の者であるのは自覚していたので…というかTLの空気感でゴーバス本放送時のこと思い出して、ちょっと懐かしかったわ…
玩具の販促要素が少なかった点については、私はそもそも特撮に関係なく物理グッズをほぼ買わない人間で(部屋に置き場所がないから)いくら応援になるからとはいえ玩具はなぁ…と思ってたので、逆に写真集とかの大友向けコンテンツをどんどん出してくれるんで助かりました。
(ちなみにコズミックスイッチとかウィザードリング、ガンバライドカードは少しだけ集めてた。かさばらないから。)
シナリオにしても、特撮というより、従来の深夜アニメとか連続ドラマの文法で語られるタイプのストーリーなので、特撮のお作法を見たい人ほど違和感あっただろうな、とは思う。
まあ、しばしばライブ感が行き過ぎて、あれ、ここってどうなったの?ていう点がなかったかと言えば嘘になるけど…それ以外の加点要素が多すぎるので。
総評
私にとってキングオージャーは、
「ところどころアラはあるが、瞬間最高値が高く、末永く愛していける」という意味でサマーウォーズと同じような立ち位置の作品になった。
ドンブラとは別の意味で、間違いなく王道ではないと思う。
戦隊シリーズ内においても、ワンピースFILM REDみたいに、ずっと追ってきてるオタクよりは、初見もしくは出戻り組向け、という位置づけが一番しっくりくるんじゃないだろうか。
少子化のご時世、これを機に特撮ファンの裾野が大人にも広がってくれてたらいいなあと願う。
おわりに
ブンブンジャーはじまりましたね。キングオージャーと180°違うザ・王道戦隊!て感じで懐かしい気持ちになった。ゴーバスターズが終わってキョウリュウジャーが始まった時も、初回は
「ちょっと王道すぎるな〜…前作が恋しい…」
てなってたけど、最終的に箱推しの戦隊になったから、何回か見れば新しい作品にもハマっていくんだろうなあ…
いや嘘です。今でもめっちゃロス。キングオージャーのCMがどんどん流れなくなってくの寂しい。今度行く予定のGロとFLTが待ち遠しくて仕方ない。
もちろん映画もね!!
キングとウッチーと弥生ちゃん、出てくれてありがとおおおお
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