ディズニー「ウィッシュ」、優しい家父長制をぶっ壊す映画だった

本当は2023年映画鑑賞まとめからnoteに移行しようと思ってたんですが…
今日観てきて予想に反してかなり刺さり、ふせったーじゃ収まらなくなりそうなのでこっちに書きます。

ウィッシュ観てきた!!

前評判が正直微妙だったこともあり、殆ど友人の付き合いのつもりで観に行ったのですが…今の私にはかなりクリーンヒットする映画だった。
今年のポリコレ(いい意味で)枠はバービーがあるからそれ以上はないだろうな…と思ってたら最後に凄いの来た、いや聞いてないよ!!てなったわ。めっちゃ良かったです
冒頭のあらすじ(クラシック作品のオマージュで感涙)の中で「忠実な妻」てワードが引っかかってたんだけど、それが後ほどこうやって効いてくるとは…

家父長制ぶっ壊す系だとどうしても男VS女、てなってしまいがちだけど、今回のは独裁者VS民衆って描き方だったのも面白かったな。これ確か中国でも公開してるんだよね?よく検閲通ったな…

マグニフィコ王について

SNSでちょっと面白い感じで流行ってた、かついつもの「日本でだけやたら人気が出る悪役」パターンだったので期待半分ぐらいで臨んだんだけど…思ったより重たいキャラだったな…あんまり茶化せないよ…

私は悪役にかなり同情してしまうタイプで、どうにかして断罪を回避してほしい&断罪される理由づけを探してしまうのだけど、マグニフィコ王も例によってそれだったので全編通してぐるぐる考え続けながら見る羽目になったよ…
序盤が善政を敷く王って感じで、過去の悔いが原動力になってそうなとことか、どうしても弱いんだよお…

ただ、彼の悪役像ってどこか既視感があって。
大河ドラマの戦国武将っぽかったんだよね。特に徳川家康。
私はどうする家康は見てなかったので、そこでの家康の描かれ方はよくわからないんだけども。徳川家康って幼い頃から戦に巻き込まれて、それでどうにかして争いのない世の中にしたい、て考えた時にルールで武家たちをガチガチに縛った人、てイメージがあって。そのお陰で江戸時代は百年以上続いたわけで。

マグニフィコ王も過去に家族を失って、もう失わないために必死だったと思うんだよね。
そのために願いを献上させるシステムを作ったんじゃないかなあと思う。
作中では人々を扇動するから、という具体的な理由が出てたけど、そうじゃないとしても願い=欲望である以上、それは争いの火種になることは予想がつく。
だったら多少腑抜けになろうが願いが無い方が、人と人の争いは防げるんじゃないか、と考えてのあのシステムじゃないかな?
人の願いが、彼は何よりも恐ろしかったんだろうと思う。

あと、あれだけ努力してるのに、自己肯定感の拠り所が自分の容姿なの、彼の浅はかさが表れてて良かった。実際容姿がいいのも相まって笑

そしていつもの悩み

ディズニー(というか海外作品全般)はヴィランに対して容赦ないので、今回も覚悟はしてたけど最後まで王が死なないかめっちゃハラハラしてた。からの最後までめっちゃ元気そうで良かった。ただ日本人(というか私)の感覚だと、最後嫁に「地下牢に吊るしておいて」って言われるのはやっぱモヤる。割ったり捨てたりされないだけマシか…
個人的には彼って敗北して一線を退いて、支配欲や承認欲求から解放されたら静かに暮らせるんじゃないかなと思ってて。おんな城主直虎の今川氏真みたいな感じで、夫婦で静かに余生を送って欲しかった…

主人公およびその仲間について

この文章量の差からもわかるだろうけど、主人公サイドはヴィラン側に比べたら薄かったと思う。だからディズニー映画=キャラクターありき、て考えだと評価がイマイチになるのもわかる。
アーシャは自由を求める溌剌とした好ましいヒロインだけど、逆に言うとそれ以上のフックがあんまりない(歌は別)。
他の仲間たちもルーツや個性はそれぞれちゃんとあるんだけど、他のディズニー作品と比較して印象に残らなかったし愛着も湧かなかったなあ〜

ただそれこそが良かったというか、クライマックスの人々が歌で対抗するシーンがまさに象徴的だったなあと思うんだけど、あそこで対抗するのが特別じゃない人たちであることに意味があったと思う。今回の主人公サイドの人たちって、ビッグヒーロー6みたいに強みがあるわけでもないし、聖人のような綺麗な心を持ってるわけでもないし、絶対的な強い絆で結ばれてるわけでもない。本当に素朴でどこにでもいる一般市民なんだよね。
本作のレビューに、アーシャは自分と身内の願いを叶えて欲しいだけのクソガキ、みたいなのがあったけど、マグニフィコ王はああいう何者でもないクソガキにこそ、倒されるべき存在だったんじゃないかと思う。

とはいえ微妙だった点

最後、今回のストーリーなら共和政にした方が流れ的に自然だったんでない?女王も支配側に少なからず加担してたじゃん…でのがどうにも引っかかった。まぁあの女王が悪政を敷くとは思えないけど。立憲君主制にしておいてくれると良いなって脳内補完してる。

あとは作画全般。他レビューでも見かけたけど、確かにミラベルの時よりも後退した?て感じてしまった。100周年であえてセルルックに近づけたのかもしれないけど…それにしても結構大味な動きが多かったと思う。

曲!!間違いなく最高です
ナンバーごとに違うテイストなのも飽きないし、正直シナリオだけだと退屈かな?てシーンもグッとテンション上げてくれて良かった
吹替だと日本語ミュージカル×メンバーのせいでどうにもFNS歌謡祭感が出るけどそれも面白かった。
あと王の謁見シーン、どう聴いても横浜アリーナでこれも楽しかったです。紅白でちらっと歌ってくれないかなあ…

#映画 #映画レビュー


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