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ちょっと長めの図書紹介③

新型コロナウイルス感染拡大が奇しくも
少人数学級の実現を加速させ、
いま、35人学級が実現しそうである。

しかし、35人学級は
「先進国ではもはや『少人数学級』と
呼べるレベルでもない」(p.3)という指摘通り
本書は35人学級の実現を称賛する本でも
満足感を伝えるための本でもない。

『もっと! 少人数学級』──
タイトル通り、現在の標準定数から
5人程度の改善ではなく、
いまの半分、20人学級までを提言している。
しかも、要求だけを突き付けるのではなく
それに必要な財政量の試算や段階的改善に向けた
計画まで提示している。(p.94)

しかし、
クラスの人数が減ることで
どんないいことがあるのだろうか……?
学校外から少人数学級の価値を考えると
なんとなく、授業で個別に指導してくれそう
ひとりひとりに向き合ってくれそう
という感覚になるだろうか。
さらにそれと合わせて、成績を付けたり、
提出物のチェックをしたりする時間が減って
先生がラクになりそうという感覚もあるだろう。

学校の働き方改革が叫ばれ、
教員の多忙化は社会問題となっている。
そのため、
後者的な意義ももちろん求められるが
正直なところ、
子どもがどう変わるのか
子どもにどんな効果が表れるのか
それが社会的な考えや感覚かもしれない。

ここまで引っ張ってみたが、
本書にはその説明──こたえも用意されている。
少人数学級を経験した教員らによる
実体験を語る場(第1章)を設けているのだ。
しかも、いちばん多くの紙面を割いている。
少人数学級の効果、
それを読むことで体感してほしい。

また、
もう少しこの問題を考えたい、
深く学びたいひとのために
少人数学級の意義(第2章)と
学級編制のしくみや課題(第3章)も
かんたんにまとめられている。
いわば「少人数学級」入門書である。

そして、「少人数学級」には、
やはりカネが必要なこともわかってくるだろう。

ミクロ的、現場的な教育財政を
考えているわたしの立場から申し上げれば、
「少人数学級」の実現に向けては、
教室環境や授業環境の改善も
同時に訴えていく必要性があるだろう。
教室数自体の整備も当然だが、
それに付随する教室環境としての
黒板やテレビ、エアコンなどのモノも必要だ。
いまでいえば、タブレット充電庫もそうだ。
また、授業環境でも学級数分必要なモノは多い。

やはり、カネか──
ということになるが、
それも「少人数学級」を求める理念
それがあってこそ認識が変わり、
行動に移せるのだと考える。
そのための知識を
与えてくれる1冊になるだろう。

知識は認識を変える。

山﨑洋介さま
ご恵贈ありがとうございました。

#少人数学級

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https://www.junposha.com/smp/book/b559627.html

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