[小説] だから尻尾を振ったんだよ

〜 僕の家族 〜

10.おかあさん

おかあさんは僕のごはん係だ。

優しくって、小さくって可愛い。

おかあさんは体が小さいから滅多にお散歩には行ってくれないけれど、

一度、僕を注射に連れて行ったことがあるんだ。

その日は生憎の雨。

僕は注射なんてぜんぜん怖くない。

それよりもおかあさんとのお出かけが嬉しかった。

嬉しくってつい引っ張り過ぎちゃったんだな。

おかあさんの長靴がツルッと滑ってどて〜んと転んじゃった。

おかあさんが起き上がるまで待ってると、

「あら、待っててくれてるの?優しいのね。」って言うんだ。

僕が悪いのに、僕を責めないおかあさんの方が優しいよね。

「痛くない?」って聞きたかったけれど、僕は人間の言葉を話せない。

だから、尻尾を振ったんだよ。

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11.おとうさん

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