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好きになった人のこと

「僕と付き合ってもらえませんか」

23年間生きてきて、初めて言われた言葉だった。
少し噛みながら、震える声で、こちらまで緊張が伝わってくるような表情で。

恥ずかしくてあまりちゃんと顔が見られなかったけど、「よろしくお願いします」と答えた。

答えたけれど、正直その時私はあなたのことをそこまで好きではなかったと思う。
ただ、好きになれそうな気はしていた。
…曖昧な気持ちでごめんね。

彼とは某マッチングアプリを通じて知り合い、意気投合した。
特に共通の趣味があったわけではないけれど、アイドルオタクという私の嫌われそうな(?)趣味も全肯定してくれたし、何より話していてものすごく波長が合う人だと思った。
初めて会った日に、高校生の頃の少し辛かった思い出を話したりもしていた(重い)。気付けばそのくらい、心を許せる相手になっていた。
彼も素の部分が出せているのを感じられて嬉しかったし、一緒にいて楽しいなあと素直に思った。
いろんな話をする中で、一緒に行きたいところや一緒に食べたいものがたくさん思い浮かんだ。

それと、このことを彼が覚えているかどうかは分からないが、この日、それぞれの道中でお互いが聴いていたのが、同じ曲だった。
それも、大切な人とこの先もずっと一緒にいたいと歌う、あたたかいラブソング。
運命にも似たものを感じた。
私はきっとこの人と付き合うんだろうなと思った。

とはいえ。
「付き合って」と言われたら絶対にOKしようと思ったけれど、この気持ちは「=(恋愛的に)好き」ではなかったと思う。
他の人よりは良い人だし、、と思うこの気持ちは、あくまでも相対的な「好き」でしかなかったからだ。
私は一目惚れをするタイプではないし、当たり前と言えば当たり前かもしれない。
ただ、普段人見知りをする私がここまで自然に話し続けられたこと、時間が過ぎるのがあっという間だと思ったこと。
その事実は、驚きとともに、大きな安心感として心に残った。

いつか、彼氏は欲しいなあと思っていた。
あくまで、人生経験として。
最終的に結婚するかどうかは置いておいて、「恋人のいる生活」というのがどんなものなのか、経験してみたかった。
だから、完全に好きになったとは言えないけれど、この人と付き合ってみようと思った。
なんだかんだ、初めて会った日から、この人となら長く一緒に過ごしていける気がしていたのだ。
…たった一言のあの返事の裏には、そんな気持ちがあった。

これまで誰とも付き合ったことのなかった私は、とにかく自分に自信がなかった。
恋愛はドラマか映画か漫画の中の世界の話で、結局のところ自分には縁のないもののような気がしていた。
だから、あの日の告白も、初めて手を繋いだ瞬間も、初めてのキスも、どれも嬉しくてきらきらした大切な思い出だけれど、まだ「恋に恋していた」私には、なんとも実感の湧かないものだった。
それでも、事あるごとに「可愛い」「綺麗だよ」「頑張ってるね」「大好き」を伝えてくれる彼の言葉には、実感を持って、少しずつ救われていた。

結局、いつ好きになったのか?
そう言われると、正直なところ分からない。
もっと運命的な、ストンと落ちるような恋に憧れていたけれど、この恋はそれとは真逆な、「気付いたら好きだった」という言葉が似合う恋だと思う。
今までに経験したどの「好き」とも違う気がするけれど。
それでも、いま私は、確実にこの人に恋をしている。

向けてくれる気持ちについていこうと必死で、焦っていた私を察してか、「ゆっくりでいいから、付いてきて」と言ってくれた言葉が忘れられない。
本当にゆっくり、じっくり、大切にしてくれている。
私があなたを好きになれたのは、そんな嘘のない真っ直ぐな気持ちが嬉しくて、そして自信のなかった私の背筋を伸ばしてくれたからだ。
いつしかあなたは、私が前を向いて生きていくために必要な道標になっていた。

あなたのことを知るたびに、好きなところ、尊敬するところがどんどん増えていく。
思いつくたびにそれを書き留めるのが楽しかったりする。
最初はそんなにタイプじゃないと思った顔も、今では愛おしくて堪らない。
くしゃっとした笑顔が可愛くて仕方ない。
甘えたなところは変わらないけど、どんどんかっこよく、頼もしくなっていく。
いつも、声が聴きたくて、会いたくて、そんな気持ちで頭の中がいっぱいになる。
相対的な「好き」は、気付けば、絶対的な「好き」に変わっていた。

隣に並ぶようになってまだ4ヶ月も経っていないけれど、どうかこれから先も一緒にいられますように。

なかなか素直に言えないけど、いつも本当にありがとう。大好きだよ。



……いつか恥ずかしくなって消す気がする。笑


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