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リフトに乗ったら写真を撮られた話

大学時代、友人と2人で高尾山に登った。
行きは徒歩、帰りはリフトに乗った。

高尾山に行った人ならご存じでしょう。
途中にカメラマンが待機していて、リフト客の写真を撮ってくれる。

降りるとすぐキオスクのような小屋があり出来立てほやほやの写真が販売されている。
撮影された写真はすぐにここに転送され、客が来る前に現像されているのだ。

せっかく現像してもらったのだが、金のない僕らは買わなかった。

なんだか紙と手間が勿体ない気がして罪悪感のようなものを感じた。

ここまでやってくれたのに、買わなくて申し訳ないと縮こまって足早に小屋をあとにした。

そう思わせることで多少ネガ張っても、いや値が張っても、買う客がいるのだろう。


あれから20年経った。
我が子とともにリフトに乗った僕は、今回は写真を買った。

いい写真だった。
よく撮ってくれた、よく現像してくれた。
ありがたく購入した。

金があればこうも変わるのか(あると言っても派遣で細々と生活してる身なのでそんなにないが)。


今回は「お写真いかがですか?よろしければポーズしてください。」とカメラマンから声をかけられ、ポーズすると、
「では撮りますね、よろしいですね?」といって撮る感じだった。

見ていると、ポーズしない客の場合は写真は撮らずスルーしていた。

昔は誰彼構わず撮っていた気がするが、さすがにそれだと無駄だと思ったのだろう。

リフトの写真は行楽地で定番なのかもしれない。
実家で古い写真を見た。
白黒写真で、若い頃の親父がリフトに乗っている。
聞くと会社の慰安旅行か何かだそうだ。

何十年も昔から、人はリフトに乗ったら写真を撮られていた。
考えてみたら椅子に座っているのと大して変わらないし、逆にリフトじゃなく徒歩で登っている姿の方が絵になりそうな気もするが、人は単純なのかこのリフトというものに乗ると少しテンションが上がってしまうのだ。

なんでもスマホに撮る現代で、現像された一枚の写真は、なんとも愛おしく、見るたびにその時を思い出す。

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