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Tさん(終末期)の自己表現とケア

#伝える道具が乏しくとも #受け手の感性がすぐれていれば #情報は詳細に伝わる #感性を研ぎ澄ませた人に臨終で出会いたい #伝わったら行動してくれる人が医療者であってほしい

~表現力が人間を変容する要因~
#苦しい #痛い #楽しい  
#気持ちが良くてリラックスできるなど 、どんどん言って~

【痛みや辛さを言葉にする】
水分以外は、飲み込めないTさんの体は、ダイエット希望者のふくよかな身体を表現する脂肪など、どこにも見当たらない。

エアマットと名称された、空気で圧力を維持するマットレスに、横たわっているが、自分で寝返りは打てない。
手や足の関節を曲げるにも、鉛のような重さを感じつつ、動かしているに違いない。

痛いところはないですか?
と尋ねると、
『足』
と、Tさんが発声した。

足の踵や外くるぶし、内くるぶしが、赤くなっていた。
手足の先も、冷たくその色も赤黒く、循環が滞り、細胞に酸素や栄養が届かなくなっていることを物語っていました。

羽田沖 工場夜景



【Tさんの足湯】
足浴と、医療関係者が言っているケアがある。一般的には、足湯といった方が、伝わると思う。
実際高齢者に説明した時、伝わっていると思って足を微温湯につけて瞬間驚かれて、バタ足を始めてしまったことがある。

Tさんには、ベッドに横たわったまま、お湯を張ったビニール袋に足をつけていただき、温めることを伝えた。

足を湯につけた時、
『あったかい』
『気持ちいい』
と、言葉を発したTさん。

数日前に、お風呂に入った時の話をすると、
『あんなにぬるいお風呂じゃ、風邪ひくよ』
と、話をする。
それも、声を出すために、お腹に力を入れるので、エネルギーを消費してしまう。
そうであっても、声を出して入浴の様子を語ってくれた。


【足湯から見える連携】
Tさんの末梢の色があまりにも暗赤色で、循環が悪いのを物語っていたために、足湯をすることを心に決めた私。


足浴の時、看護師仲間二人が、こぞって、Tさんのところにやって来てくれました。
一人は、バケツに微温等をくみ、Tさんの病室に届けてくれました。

微温等を運ぶために、準備してくれた同僚


Tさんお足をつける、タライやがないからと、バスタオルを円形にして型どり、その中にビニールを2枚重ねたらいいと言ってくれる同僚。
足湯後の、上がり湯にと微温等をボトルに準備してくれる同僚。


ベッドが濡れないようにと、防水シーツを持って来てくれる同僚。
優しさに包まれた足浴(足湯)準備でした。

羽田沖 工場夜景



【音楽を流し始めてからの、ケアスタッフの変容】

終末期の方に、治療目的での医療介入は、ほぼなくなります。
その方のベッドに向かうのは、ルーティンの排泄介助や、おむつ交換。体位変換。水分の補給。
物言わぬ、対象者となれば、声すらかけず回数も少なくなりがちです。

Tさんの場合は、音楽を流しているので、廊下にいるスタッフにもお部屋からの音楽が聴こえる。
ふと、前を通る時、音楽が途切れていたら、お部屋に入りオ音楽再生ボタンを押そうと、Tさんのお部屋に訪問し、声をかける。

全ては、Tさんの
『音楽が聴きたい』
から始まった、ケアスタッフと、Tさんとのコミュニケーションです。


思いを口にしないと、始まらないコミュニケーションの一例です。
しかし、物事を受け手に伝える処方が乏しくとも、
受け手が優れていれば、詳細に伝わるという事例もありましょう。

以下に、教員があほであっても、受け手の学生が優れていると、読解してくれることもあります。
拙い伝達者は、読解力の優れた人に出会うことが、自身に向かう行為を受ける前提になるでしょう。

 2022年8月22日(月)
                               MILK


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