見出し画像

耳鼻咽喉科に通う歌手、通わない歌手。

歌手の多くが、一度は耳鼻咽喉科に通ったことがあるのではないでしょうか。なぜ歌手は耳鼻咽喉科に通うのか?そもそも通う必要があるのか?今回は、歌手と耳鼻咽喉科についてのお話です。

🍀🍀🍀🍀🍀
喉の不調の原因

私も学生の頃は、耳鼻咽喉科によく通っていました。そしてその病院の先生は、当時の歌の先生のかかりつけ医でもありました。周りの友人たちの中にも、何かにつけて病院に通っている人が多くいて、歌手が病院に行くということは、当たり前のことなんだと思っていました。

当時はいつも喉の調子を気にして、神経質になっていたと思います。演奏会のために喋るのを控えたり、のど飴や、のどスプレー、吸入器、思いつく限りの喉に良いことを実践していました。

なぜ耳鼻咽喉科に通わなくてはいけなくなるほど、喉の不調に悩まされ続けていたのか?当時は、その原因を究明しよう、とはならなかったんですよね。今から考えるとおかしな話だな、と思います。

原因は明らかで、『歌い方が悪いから』です。見栄やプライドが邪魔をして、そのことを認めることができませんでした。

原因を究明しようとせず、不調のたびに病院に通っても、再び同じような問題が起こることは目に見えていました。けれども、周りの人も通っているから、という理由で、問題の根源に蓋をして、ただただ喉の不調と闘っていました。

🍀🍀🍀🍀🍀
歌の先生の仕事放棄

そんな私でしたが、ある日を境にパッタリと、耳鼻咽喉科に行くことがなくなりました。それ以来もう15年以上は行っていません。喉の不調に悩まされることもなくなりました。今は、喉に対しての心配や不安はゼロです。

『今日は声が出るかな?』と心配していた日々が嘘のように、今では『いつだって声は出る。』という安心感があります。

全てはフランコ先生の下で学び始めたことがきっかけでした。

しばらくして分かったことは、生徒を耳鼻咽喉科に行かせるような先生は、喉の不調を起こさせるような誤った指導をしている、もしくは、歌の先生としての仕事をしていないということです。

本来、歌の楽器である喉が、生理学的に正しく機能していれば、喉の不調は起こりません。そして、楽器を機能させるための方法を指導するのが、先生の役目です。

生理学的に誤った運動を繰り返していると、喉がうまく機能しないというだけではなく、機能不全を引き起こします。それが、喉の不調を感じているときに起こっていることです。『生理学的に誤った運動を取り除いて、正しい運動を覚えていく』これが、歌のレッスンで行われなくてはいけないことです。

病院に行かなくてはならないような、何かしらの症状が出ているということは、すでに悪いサインです。お医者さんは、症状を改善することはできても、喉の使い方を指導することはできません。

喉の不調を未然に防ぐことは、歌の先生の重要な仕事です。耳鼻咽喉科に行くよう勧めている場合ではありません。そういう先生からは離れましょう。残念ながら良い指導者とは言えません。

🍀🍀🍀🍀🍀
日々変化する声

歌うための楽器である私たちの体は、自然に作られた楽器です。自然は変化するものです。喉のセッティングも、日々変化しています。それに伴って、声を出しているときのバランス感覚も変わります。

『毎日変わるんです!』と驚く生徒さんがいますが、これは当然のことなんです。そして、その変化に気づけるようになったことも、大きな成長です。以前はその変化にすら気づけなかったわけですから。

声の技術があれば、自分でバランスを調整することができます。つまり、自分の楽器を意のままに取り扱うことができる、ということです。日々変化する楽器(体)に対応するためにも、技術が必要なのです。

一方、声の技術を持っていなければ、変化を不調と捉えて思い悩むことにもなります。自分の楽器の取り扱い方を知らないということは、無防備で危険な状態です。バランスというのは、一度崩れると、ドミノのように崩壊まで一気に行ってしまうことがあります。

喉は繊細な楽器なので、一度誤った癖がついてしまうと、それを取り除くために、年単位で時間がかかることもあります。大きな楽器であればあるほど、ダメージも深刻になります。

🍀🍀🍀🍀🍀
締め

歌手にとって、耳鼻咽喉科に行くのは当たり前のことではありません。それがたとえ、日々のメンテナンスであったとしても、それは歌の先生の仕事で、病院の先生の仕事ではありません。

『体を楽器にする』そのためには時間がかかります。けれども、健康に歌い続けていくためには必要な時間です。耳鼻咽喉科知らずの歌手になりましょう!

木を切るのに8時間与えられたら、私は斧を研ぐのに6時間を費やす

エイブラハム・リンカーン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?