みんなの伝芸、スタートします。
どもです。長岡参です。
僕はこの12年来、全国を回りながら様々な民俗や芸能などを撮影してきました。そしてただ単に現代社会で生きているだけたらとても知り得ることもないだろう、多くのものを目にする機会を数多く得ることができました。コロナ禍の渦中で、東京豊島区の3つの祭礼を密着取材したことがきっかけとなり、このままでは滅んでしまう多くの民俗芸能があるのだと知りました。そこから調べてみると、Uber Eatsのドライバーなどで生計を立てている歌舞伎俳優などが実際多く存在するようなことも知ったりしました。
『産土』を始めるときもそうでしたが(そしてその旅はまだも継続中ですが)、何か大きな天災や変動がある時、大きくなにかがなくなってしまうのではないかという危機感とともに僕は作品を作ってきたのだと思います。
年齢も44歳という本当の意味で「中年」となり、上と下とを繋いでいく存在にならなくてはと強く思うようになりました。ワクチンのせいかどうかは僕にはわからないけれど、多くのお年寄りが以前にもましてバタバタと亡くなったり、救急車で担ぎ込まれるような事態が僕の周囲でも起きています。
何か。僕は産土のとき、ひたすらその「何か」という言葉を連呼していたように思います。その「何か」というものがなくなってしまったならば、もう二度と元には戻れないだろうという、ある種の悲観的観測が僕にはあります。また、勝手にどこからか再生したり、新しいものが産まれるだろうという楽観論にはどうしても至れない。きっとそれは僕はオセンチというか、古いものにどこか憧憬を抱いてしまうからでしょうし、喪失する、失くなるということに対して、何らかの感情が激しく揺さぶられるからなのでしょう。
というわけで、産土を一緒にはじめたトムさんと、それに同世代で日本における民俗芸能の一つの「柱」だといっていい小岩秀太郎さん、そして20年近く前に知り合っていて再開した太鼓奏者の林幹さんらとともに、僕が今役員をしている西森さんのEVOLUTIONの全面バックアップで、新しいYouTube番組「みんなの伝芸」を11月30日からスタートさせました。
現在最初の収録の1-4話が公開されております。次回は12/12日、うちの息子の誕生日で、小津安二郎の誕生/命日であるその日の18時に公開する予定です。素敵なロゴは、デザイン界の巨匠佐藤卓さんに作っていただきました。
「伝芸」とはありそうでなかった、僕が自作した言葉で、伝統(伝承)芸能、民俗(民俗)芸能、工芸、民俗のような様々なものを一言で括った概念のことです。
それを「みんなの化」しようというのが、本番組のメインのコンセプトです。なぜか?無論それは現状、みんなの化の真逆だからです。歌舞伎や能の客席はどういう方たちで埋まっているでしょうか?本来河原に仮設舞台を作ってやっていた最高にアヴァンギャルドでワイルドで、危ない空気をプンプンだしていたような歌舞伎の現在はどんなんでしょう。
多くの芸能の出自は「門付芸能」だったりします。これは家々を回って、お米とかお金をねだって芸を披露したもの、乞食芸(こつじきげい)です。
或いは、人のためではなく神様を楽しませるために産まれた神楽は、芸能のそもそも一番最初の起源などとも言われていますけれども、かといって神様というものの存在が昔よりはだいぶ離れてしまった現在においては、お客様が神様…とまでは言わぬまでも、まあだいぶ変容してきている。もっとつぶさに見てみれば、変容したものも、頑なに古式を守っているものも、それらの中間もある。まあそういう事情が、多くの伝芸を人々から遠ざけてしまっている理由だとも思うのです。
ですが、311後の津波ですべてを流された人々の中で神輿を担ぐ一群がいたように、コロナ禍でアマビエの図像が流れたように、飢饉の後に、ええじゃないか運動がどこからともなく始まったように、コロナで禁じられた祭りに多くの人々が押し寄せたように、伝芸は、ひとというものにとって最もベーシックなところを担保させる、大事なもの、つまり「何か」そのものであるのだと僕は思います。
これは僕の新しい「産土」的創作のあり方というか、次のフェーズだと思っております。ドキュメンタリーづくりの中では省くを得なかったものが今まで数多く存在しておりますが、この番組で色々紹介もできるでしょうし、連続シリーズというものの中で、新しいチャレンジも色々として行きたいと思っております。
ぜひみなさま番組の登録と、イイネにご協力いただけたらと。というか、仲間となっていただきたく思うのです。この番組が10万人程度の規模まで成長できれば、民俗や習俗、様々な芸能などを次代に残さんとする僕たちの活動も更に加速度的に行動できることになるでしょう。
そして、年末27日に、東京代官山のライブハウス、晴れたら空に豆撒いてにて、「イニムサニムこっからだ!!」というライブイベントを行うことになりました。これはすごいです。伝統芸能方面の若き天才たちと、郷土芸能の異能がごったまぜにミキシングされる祭りになります。まさに、「ここから新しい伝芸ワールドがはじまる」という覚悟で僕と仲間たちが半年かけて用意してきたもの、ぜひご堪能していただきたく、新しい年末のお清めと新年の神を招き入れる夜をともに祝っていただけたらと。
http://haremame.com/schedule/75770/
長岡参 拝
『産土』の連続配信や記事のアップのための編集作業は、映像を無料でご覧いただくためにたくさんの時間や労力を費やしております。続けるために、ぜひサポートをお願い致します。