ラブコメ好きのための「地獄先生ぬ~べ~」・その4

 ラブコメ的観点から、名作学園ホラー漫画「地獄先生ぬ~べ~」を再読してみると、これがなかなか面白い。怖い話に一切触れずに「地獄先生ぬ~べ~」の魅力を語っていきます。

 前回に引き続き、ぬ~べ~とゆきめの恋を追いかけます。今回はリツコ先生を交えた三角関係を読み解きます。


(前回まで)
0.本題に入る前に、ゆきめってかわいいよね
1.雪女は冷たい心の妖怪(文庫版3巻、#30)
2.本当の恋のはじまり(文庫版4巻、#49)

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3.恋のライバル登場(文庫版6巻、#69)

 ラブコメに欠かせないギミック、三角関係。私が初めて三角関係という概念を知ったのが、「ぬ~べ~」だったのではないかと思います。思えば「犬夜叉」の三角関係をすんなり受け入れられたのも、ぬ~べ~の洗礼を受けていたからかも。

 ゆきめの恋のライバル、ぬ~べ~が下手な口説きをしてはフラれる片思いのお相手、リツコ先生。ぬ~べ~の同僚で、エロい体の美人です。怖いものが苦手なのでぬ~べ~との相性は悪いし、そもそも普段のドジでヘタレのぬ~べ~にとっては高嶺の花。しかし人間であるというだけで高いアドバンテージを持つ彼女。ぬ~べ~だって、顔は悪くないし、誠実だし、本当は格好いい。
 歳も近いリツコ先生とぬ~べ~は、実はいつ職場恋愛が始まってもおかしくないシチュエーションにいる仲なのです。

 序盤からぬ~べ~をまったく相手にしていなかったリツコ先生ですが、69話にしてようやく転機が訪れます。
 「しょうけら」という妖怪が出てくる回で、トラウマ回として紹介されることもあるちょっと怖いエピソードでもあります。でもいいの、妖怪は。

 ラブコメ的にこの回で重要なのは、リツコ先生がぬ~べ~の魅力に気づいて好きになっちゃうってこと。生徒を守るために恐ろしい妖怪に立ち向かう、今まで知らなかった彼の一面を目の当たりにするのです。

 この回の重要ポイントはもうひとつ。ただのお色気担当ではない、リツコ先生の人となりが垣間見えることです。
 ぬ~べ~の除霊シーンを見る前に、怖がりの彼女は自分の生徒のためにひとりで妖怪に立ち向かおうとするのです。単なる美女の役ではなく彼女の「先生」としての強さやプライドが初めてはっきりと描かれます。

 しょうけらは怖いけど、この話はラブコメ上重要な伏線なのでぜひアニメも見てほしい!!

4.三角関係の妙(文庫版6巻、#79)

 しょうけらの回でついにラブコメの土俵に上がったリツコ先生。いよいよ三角関係が見えるのが、#79です。

 座敷童の機嫌を損ねてしまったゆきめ。座敷童は報復としてぬ~べ~とリツコ先生をくっつけようとし、ゆきめが必死でふたりのデートを妨害しようとするお話です。

 子どもの頃、たまたま録画してあったこともあって何度も視聴し一番印象に残っている話であり、同時に、一番何もわからずに見ていた話でもあります。

 エピソード終盤、ぬ~べ~は、リツコ先生とのデートがすべて座敷童によって仕組まれたものであったことを悟るのですが、どうして彼は当たり前のようにゆきめと一緒に帰るんだろうって、座敷童と一緒に首をかしげていました。

 当時の私は、ぬ~べ~が本気でリツコ先生を好きなんだと思ってたんです。そして、主人公が好きな人と結ばれるのがお約束だと信じ込んでいました。だから、純粋にゆきめが二人の邪魔をしている話として見てしまっていたんです。ゆきめ視点の話にもかかわらず、私はゆきめに一切感情移入していませんでした。

 座敷童のせいだと気づかず浮かれていたぬ~べ~は、最後、ゆきめに「君の気持ちを知っていながら無神経だった」と謝ります。ぬ~べ~ってよくゆきめに謝るんですよ。自分のこと好きでいてくれるのに応えてあげられないから、後ろめたくて。彼は良くも悪くも、ここで、「座敷童の力を抜きに、もう一度デートしてくれませんか」と口説けるような男ではないのだと思います。単にゆきめへの引け目があったからだけでなく、仮にゆきめが見ていないところでも、ぬ~べ~にはそんな甲斐性はない。

 あと面白いのは、三角関係が始まっていることに、ゆきめは勘付いてるけど、ぬ~べ~はまったく気づいてない点。やっぱりこの男は機微のわからない鈍感な男で、この後もしばらく優柔不断な態度が見え隠れします。

 さて、この後三角関係はどこに向かうのか。次回に続く。

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