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徒然草子

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徒然なるままに書き散らした文章まとめ
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2018年12月の記事一覧

ここではないどこか、自分ではない誰か

ここではないどこか、自分ではない誰か

 ここまで来たぞ。
 いつ、どこに着いたら、私はそう思えるだろう。
 初めてひとりで乗った国際線の機中、毛布にくるまって読書灯でクリスティの『終りなき夜に生れつく』を読んでこれから向かう国に思いを馳せながら、ふと思った。

 大学進学を機に、出たくてたまらなかった地元を飛び出してから、七回目の夏。夏のボーナスが入った通帳を見て、初めてのひとり海外旅行に挑戦しようと決めていた。盆の帰省ははなから頭に

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つまらない大人に

つまらない大人に

 高校生の頃、進学校に通っていた私は、娯楽も限られた田舎を馬鹿にしながら、勉強することだけが都会に出る唯一の合法手段で、できるだけ偏差値の高い大学に行けば自分の可能性も世界も広がって、憧れてきたすべてが手に入ると信じていた。そんな馬鹿な高校時代には、周囲の環境と自分の思い込みで塗り固めた規範がたくさんあった。浪人してでもいい大学に行くのが当然だとか、本当に成功した人ならこんな田舎には帰ってこないと

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