ちぐはぐ。
如何様にして、こんな風になってしまったのだろうか。
思い出せば、何時だってそうだった。物事が万事順調に運ぶことを夢想しているだけで、実際には一つとして上手くいったためしはない。
外面がいいような振りをしているが、事実はかようにただの内弁慶にすぎぬ。
煙草を喫むようになったのは何時の頃であっただろうか。多くの人にある様な大きな切っ掛けというものは自分にはなかったように思える。
何か強い緊張状態にあった訳でも、重圧に押しつぶされそうになっていた訳でもない。ただ、なんとはなしに白い紙巻きに火をつけた。
買ったものではなかった。居酒屋でアルバヰトを始めて、暫くたった或る日客が忘れていった煙草の箱を捨てる代わりにそっと持って帰ってきたのだった。
何を考えていたのであろう。当時の感触はどうにも思い出す事ができない。
モラトリアムの只中、言いようの無い焦燥感、半ば諦めかけた道と、心地の良いぬるま湯。
きっぱりと訣別する事のできない自分と、メリもハリもなく出会わなくなる友人達。
物語に出てくる様な決定的な出来事など、どこにもないのだと気付くのには結構な時間を要した。
「袂を分かつ」と言えるほどの決裂よりも、「また会おう」と言って軽い足取りで踵を返す、その様な時の方が圧倒的に多いのだ。
寂寥、だったのかもしれない。ただ、自分に関心を持って欲しかっただけで、不器用が故にその方法を知らなかった、もとい今でも知らないのだろう。
きっと、「煙草なんて止めた方がいい」と言われたかったのだ。
紫煙の中で、余裕のあるような表情を作りながらその仮面の下では酷く怯えているのだ。
部活動をやめた時もそうだ。自分がついていけなかっただけなのに、変な理由をつけて楽器に手を伸ばし、結果ずるずると引きずったまま、今の今まで何かを諦めきれずにいる。
誰かに見て欲しかった、誰かにかまって欲しかった、誰かに認められて、レゾンデートルを見つけたかったのだ。
吐く息が白く、紫色の煙と混ざっては消える。赤く光る突先から灰がぽろりと落ちた。
ぬめりとした感触が口のなかに広がり、それを一気に吸い込んだ。
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