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雨と、酒と、風にやられて。

予防線を張っている。
僕はあまり人に興味がないような顔をしているが、実際のところどうなのか、というのはどうやら自分でも分かっていない。

基本的に、僕は人に質問をしない。それはきっと、自分が質問されたくないからだ。
「人にされたくないことをしない」というよりは、「自分が嫌な思いをしたくない」という自己中心的な理由の方が大きい。
「嫌なことなら答えなければいいじゃないか」と思うかもしれないが、残念ながら僕はそんなに器用ではない。馬鹿正直に答えては落ち込んで、の繰り返しだ。

根底には「嫌われたくない」という気持ちがあるのだろう。当たり障りのない話ばかりして、会話の隙間を埋めるための、くだらない自虐を早口で言い続ける。そうでもしないと、いつ相手のペースに持ち込まれてしまうかという恐怖から逃れる事ができないのだ。
それは、たしかに嫌われる事はないかもしれないが、好かれる事もないだろう。

前に、「あまり心を開かないんだね」というようなことを言われた。
自分としては、その人には大分心を開いていたつもりだったのだが、どうやら世間的には僕は殻にこもったままだったようだ。
その言葉が、未だに引っかかっている。別に悪いことをしたわけでもないのに、頭のどこかにこびりついては、剥がすこともできないままで、忘れたふりをしている。

人を傷つけたくない、と思う。しかし、それは本当は自分が傷つきたくない、という事なのだ。
誰かを笑いものにする時に、自分が笑いものになる事を怖がって、うまく笑えないでいる。
しかし、相手の心の内側に触れたいのならば、無傷ではいられない。心の外側を傷つけながら、進まなくてはいけない。

うまくいかない。薄っぺらな言葉を、無駄な知識や言い回しで誤魔化して、分厚くみせてはまるで嘘をついている気になって、また落ち込む。
自信がないから、自信があるフリをしている。怖くてたまらないから、怖いものなどないような顔をしている。
文字の海に愚痴を投げ込んでは、溶けていくのを眺めて、まるでそれが意味のある事のように思いこむ。言葉にすれば何かが明らかになると、無理にでも信じて今日も何かを書いている。

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