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ジャク・アマノ

店頭で靴を買うのは久しぶりだった。近頃は専ら"いんたあねっとしょっぴんぐ"で賄っているので、中々店舗まで足が向かない。でも今回ばかりは結構急ぎで、且つ商品の見当が付かないこともあって実店舗へ。
普段はスニーカーばかり履いているので、正直なんでも良い。コダワリはあるように見えて全然ない。adidas派だったんだけど、最近NIKEに浮気しようと思ったりしてるくらい。

しかし、今回は法事のためにちゃんとした靴を買わなくてはならなくて、それで仕方なく店に行った。多分これもネットで買っても何の問題もないんだろうけど、めんどくさくて先延ばしにしているうちに「明日必要です」みたいな状況になっちゃって、慌てて街に出た次第だ。
いわゆる紳士服店で買うか、それとも靴屋で買うか、少し迷って先に靴屋に入った。餅は餅屋。靴は靴屋だ。(紳士服店より靴屋の方が駅に近かったという理由もある)

店頭に並ぶ「めちゃくちゃ軽い」「履きやすい」「動きやすい」みたいなやつをとりあえず手に取る。自分のサイズより少し大きいものが展示されていて、「ご自由にお試しください」と書いてあったので履いてみる。なかなかどうして悪くはない。むしろかなり良い。今まで履いていた紳士靴はかなりオワリの靴で、ドンキで買った激安品だったのでめちゃくちゃ歩きにくかった。それと比べたらもう完全に月とスッポン状態。歩きやすさもさることながら、見た目も普通に良い。値段も、まあちゃんとした靴ならこんくらいはするよね…というくらいでべらぼうに高いわけではない。正直万券一枚くらいは飛ぶかな…と覚悟していたので全然良かった。

ファーストコンタクトでめちゃくちゃ最高の靴を引き当ててしまった(まんまと店側の策略にハマっている)ので、もはやこれ以上悩む必要はなそうだ。紳士靴コーナーにはまだまだ沢山の靴があるけどどれも予算オーバーだったり見た目がちょっと派手すぎたりして、最初の靴に比べたらどれも自分には合ってないように思う。
じゃあさっさとこれを買ってしまえばいいのだけど、せっかく店に来たのにこんな簡単に決めるのもな〜という謎の意地みたいなものが出てきてしまった。店にくる前は「ま、ちゃちゃっと買ってしまおう」くらいの気持ちだったのにいざこうしてサラッと決まってしまうとなんだか名残惜しい。さっきまでは「いやいや、こんなのは違いますよ。こういうのじゃないんで」みたいに思いながら見ていた棚も「ちょっと試してみたらどうですか?」みたいな顔をしているように見える。

「もう少し悩むかな〜」と考えているところで店員さんと目が合った。そういえば、この試着した靴はサイズが違ったんだ。
「すみません、これのワンサイズ下のやつって…」
「はい、ございますよ」
「ありがとうございます」(徐に試着)
「どうですか?」
「これって普段履いてるのよりサイズを下げた方が良いんですかね…?」
「そうですね〜、大体0.5から1センチくらいは小さいものをお履きになられますね〜今履かれているのが丁度くらいだと思いますよ」
「なるほど、じゃあこれで…」
ラリー終了。即会計になってしまった。

そのあとはめちゃくちゃスムーズにお会計→退店。あまりにも一瞬の出来事すぎて心が追いついていなかった。
無論店員さんに落ち度は全くない。問題は僕の方に、僕の気持ちにある。普段から「店員さんにはあんまり話かけられたくなくて…」みたいなことを言っているくせにここまでドライだとなんか物足りない。もっと「いやー、お兄さんだったらこっちが良いと思いますよ!!(目キラキラ)」みたいなやつとか欲しかった。小ボケの一つや二つをブチ込む隙を与えて欲しかった。
とか言いながら多分本当にそれをやられたら「いやー、ちょっとあの店員グイグイ来すぎだわ…」みたいなこと思ってたと思う。

こういうことは結構良くあって(良くあっちゃダメだとも思うのだが)、「大盛り無料ですよ〜!」みたいなことを言われると「うるせぇな、俺は俺の食いたい量を自分で決めるんだよ」とか思うし、かといって無愛想な店員にあたると「もう少し愛想良くして欲しいな」みたいなことをぼやいたりしてしまう。
集団行動で予定がカチカチに決まってると「もっと自由行動をさせてくれ」と思うし、かといって何も決まってないと「もっと予定を決めてくれ」と思う。
「こうした方がいいよ」と言われると「うるせぇな」と思うし「これ良かったね」と言われると「こんなもんじゃねぇし」と思う。

20代になってようやく自覚したのだが多分俺は単なる天邪鬼野郎で、色んなものに否定的になりがちだ。誰かに指図されるのが本当に嫌だし、誰かにジャッジされることほど腹立たしいことはない。
もちろんもうそれなりに年をとっているのでいちいち怒ったりはしないし、言葉に出して言ったりもしないけど腹の中には煮え切らない気持ちが存在していたりする。時折それが顔を出して「ウワー!」って感じになったりもしてしまうんだけど、近頃はどうにか付き合い方を見つけられている気がする。

でもこういうのって実は多分結構大切な感情で、本当に闘わなきゃいけない時に怖気付かずに剣を抜けるかどうかに関わってくるんじゃないかとも思う。「なにくそ負けるか」と思うその気持ちの使い所を、昔はきっと有り余るエネルギーのおかげで全方位へと向けることができていた。今は少しずつ力を失い始めていて、残った小さなエネルギーをどこか一点にやってあげられればいいなと思うばかりだ。
「こんなもんじゃねぇっすよ」と思うこともきっと大事で、「ま、でもしゃーないよね」と思うことも大事。

そういえば、最近流行っている性格診断のMBTIとやらではどうなっているのだろう。
個人的な意見だが、正直あんまりそういう類のものは信じてなくて、「まぁ、だから何?って感じなんすけど」という風に受け流している。
ただ流行には乗り遅れたくなくて。
というのも、やっぱり何かを作って誰かに聞いてもらうというのにはある程度世の中の潮流を読まなくてはいけないな、という自覚があるので半ば無理やり流行りものに飛びつくようにしている。中学〜高校の頃は「流行りは全てクソです」みたいな感覚だったのだが、どうやらそれではいけないと大人になって気づいたし、「名作」と呼ばれる映画はやっぱり面白いし、ブームになっているマンガを読めば心が熱くなる。
というわけで流行りの診断の結果に照らし合わせたりするが、僕のタイプに「天邪鬼」は入ってない。
「ほらー!やっぱ入ってないじゃん。この診断は信用ならんな」と思いながら「もしこれで入ってたとしたら「いや、そんなことはないだろ」と思ってたな」という感覚がある。もうその時点でこんな診断に頼る必要もなく天邪鬼であることが分かってしまうな…。

急にこんなことを言い始めたのにも訳があって、今日の昼間に「えー、Iなんだ。絶対Eだと思ってた」と言われたからだ。
MBTIの結果というのは4文字のアルファベットで出てくる。最初文字はIかEで、"I"は内向的、"E"は外向的という意味があり、その2種類のどちらかになる。
つまり、彼にとって僕は"E"に見えていたということだ。(!!!)
これは僕にとってはかなり衝撃だ。診断結果でもカチカチに"I"を引き当てているし、僕自身も「まあ内向的だよな…」と自覚、そりゃあもうめちゃくちゃに自覚しているので驚きだった。
だからどうしたという感じだが、僕自身は結構"E"への憧れみたいなところがあるのでちょっと嬉しかったりした。ここ数年で結構頑張って人と関わるようになったりとかめちゃくちゃ初対面の場面に飛び込んでいったりとか。そういうことが多くあったおかげかと思うと感慨深い。無論、これはどっちがいいとかの話ではないので悪しからず。

てか、この診断で気に入らないのはその結果が変わることがあるということだ。「半年ぶりにやったらTからFになってた〜♪」みたいなことがありえるらしい。うーん、やっぱりちょっとしゃらくせぇなと思ったりする。
そういうところでもやっぱり天邪鬼な自分が心の片隅で囁いていたりして、「いやいや、俺のことをEだと思うなんてまだまだだな」みたいなのとか、「いやいや、Iの方がクリエイターとしてはいいんじゃない?」とか、余計なアマノジャクフレーズが頭の中を巡っている。

靴を買いに行くだけで色々と考えることが多くてかなわない。
MBTIの診断結果を英字4文字の何かに置き換えてボケるやつもやり尽くしたしね。
IだかEだか知らねぇけどよ、と思ったりして。大学時代に教授が言っていた「結局アイデンティティがどうとかって悩む奴より、「俺は俺だ、文句あるか?」って奴が1番強いんだよね」という言葉を思い出す。
確かにな〜。天邪鬼がどうとか、天邪鬼だから良いとか悪いとか、4文字の英字16通りにつけられた『建築家』だとか『主人公』だとか『理論学者』だとかいうよく分かんない診断結果とか。マジで全部どうでもいいな〜。
以前、何度目かで会う人に久しぶりに挨拶をしたら「どうも。俺です」って言われた。いやー、俺もそうなりたいですわ…。

毎月やっている長めのnoteの5月分として更新するつもりがもう6月になってしまっていてめちゃくちゃ焦りながら書いたけど、なんとなく今月の振り返りになった気がする。
6月分もちゃんと書き上げたいな〜。忙しい1ヶ月になりそうなので色々と書きたいことが出てくると思うので頑張ります。
「天邪鬼」がどうのこうのとほざいているだけの駄文。タイトルは「アマノジャク」を反対にしているだけのくだらないダジャレです。
ストレートに「天邪鬼」というタイトルをつければいいのに、わざわざ変な捻り方をして分かりづらくするのには理由があります。
それは僕がどこまでいっても「天邪鬼」だからでしょう。

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