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夏着物の総括

まだまだ暑い日が続くが、九月になったということで、夏着物の総括をしよう。着物毎日生活は、夏になにを着て過ごすか、ということが重要課題になる。お出かけは、絽の着物。軽くて涼しく、色や柄も華やかだ。夏の終わりには、活躍した着物を洗って、アイロン掛けしてしまう。

ふだんには、夏大島、夏塩沢、そして、小千谷縮や、上布といわれる麻のもの。母たちが、夏には着物を着ない人だったので、家には絽や紗の着物が数枚あるだけだった。夏は汗をかくから、お手入れが大変だからと、涼しくなるのを待って単衣を着ていた。

それが、必要に迫られて、毎日着物生活をするようになって、いただき物の、夏大島を恐る恐る着てみる。高価だから大切にしなくては、と言われながら、着てみると軽くて涼しい。自分で洗うこともできる。これは便利だと、ネットでも探して買い求めた。昔のものは裄が短く、62-64センチ。ふだんの着物は65-66センチなので、買うときに迷ったが、そんな心配はいらなかった。短くても、まったく問題ない。

夏の時期、ふつうの女性は半袖やノースリーブ。その中で着物を着て、お袖が短めでも、目立たない。これで、ほぼどんな着物でも着ることができると気が付く。肌着にも工夫がある。ナイロンなどの化学繊維は用いない。正絹の長襦袢の生地から、肌着も手縫いする。作り方はネットで検索して、多少曲がっても、下手でも肌着なので、気にしない。絽の長襦袢の洗い張りの生地があって、これで作った肌着は着心地よく、夏の間、活躍してくれた。肌着はネットに入れて普通に洗濯する。

長襦袢は畳んで、洗濯機にいれ、そのままデリケート洗い。おしゃれ着洗いの洗剤で洗える。洗ったら、棹にサザエさん干しして、乾かす。夏着物は、九月が終わるころ、順番に洗って、アイロン掛けしてしまう。

夏用に麻の足袋を求めたのだが、こちらはあくまでもカジュアルで正式なものではないと知り、福〇などの、安い足袋、生地の薄いものを求めて、夏用にする。おろす順番は、マイルールで以下の通り。

新品 → 能楽堂にいくとき、汚れていなければ洗って、二三回利用
歌舞伎座 →  能楽堂に使ったものを利用
雨の日 → 汚れがとれない足袋を使う
知り合いの家を訪問  → 新品の足袋にカバーをかけて、玄関先で脱ぐ
             あるいは、あえて色足袋をはく

能楽堂には、能楽の神様がいるので、いつも新しい、あるいは洗っても白い足袋をはく。歌舞伎のお国は、それほどうるさそうではないので、新品にこだわらず、きれいな白い足袋。

雨の日は、泥や汚れがついて、落ちないし、また、途中でも履き替える必要があったりするので、家にある雨の日用の足袋を履いていく。

知合い宅を訪問。こちらも歌舞伎座に準ずる白足袋なのだが、家や場所によっては、汚れが目立たないようにわざと色足袋をはくことがある。相手に余計な負担をかけないように、気を遣う。

足袋は消耗品なので、お買い得なときにまとめ買いをするが、目下の悩みは少し汚れた白足袋をどうするか。クチナシや、紅茶で染めて、普段使いにするという方もいるらしいが、まだ、やったことはない。

帯揚げ、帯締めも夏用のものを使っているが、お太鼓を締めずに、半幅帯で気楽に着たいという日も、帯揚げだけは使っている。帯が崩れる心配もなく、昼寝しても大丈夫。こちらも九月のお彼岸前には片付けなければと思う。昔は九月十五日といわれていたのだが、こんな高温の日々が続くと、お彼岸までは許されるような気がする。

絽の着物は、自分的には九月ひとけたまで。夏大島や夏塩沢は、目立たないので、十月でも使える。ただし、長襦袢の半襟は、絽から塩瀬に変えよう。

夏着物は、お袖があるので、冷房対策にもなるのだが、首筋には風が当たる。そこでジョーゼットのシルクのスカーフを用意して、能楽堂や歌舞伎座に行く。シルクのショールはひざ掛けにもなるので大切。

麻の着物は、今日一日、片付けものをする日に着ている。どこに座っても安心だし、汚れたら、洗濯機で洗える。麻の着物なら、海辺の散歩も楽しい。塩水がかかっても大丈夫。佐渡に能楽を奉納するときは、麻の着物を着ていた。どこにも座れるので、係の人が気遣いしなくすむ。

白い絽の着物を着ているときは、膝の上に手ぬぐいを折って、広げ、そこに手を置いている。知らないところで汚れてしまうのだが、それを恐れていては楽しくない。おしゃれして、お出かけという気持ちの高揚も大切。夏着物は、貰いものが大部分なので、大胆にどこにでも着ていく。何十万も出して作ったら、たぶん仕付けを付けたまま、しまっておくと思うのだ。

帯も夏帯を使う。ただ、薄手の献上の半幅帯は、よい仕事をしてくれる。毎日着物には欠かせない。盛夏は、芯のない、荒く編んだ羅の帯。色の濃いものは、汗をかいて、着物に色移りすることもあるので、注意が必要。気に入った帯はどうしても使ってしまうので、毎日日替わりで使うようにしている。夏帯は芯がいらないので、反物から、自分で仕立てることもできる。手芸用の接着剤もあって、自己責任になるが、接着剤で留めて、アイロンをかけるだけで、きれいに仕上がる。縫うよりも見た目がきれい。

夏の外出は、家から駅までがいちばん暑かったりするので、保冷剤をタオルハンカチで包んで、首筋に当てて歩くといい。保冷剤を専用バッグにいれて、道中使うこともある。チーズを買うときには、必ず冷媒をもらっている。

今年は、絽の長襦袢の端切れで、マスクを作った。折りたたんで、両端をまつるだけ。毎日、寝る前に手洗いして、干しておくとすぐに乾く。絽のマスクは、苦しくないのでよかった。

夏の着物生活は、たすき掛けに前当てのついたエプロン。これで家事も料理もする。エプロンは二日おきに洗う。冬は割烹着ですっぽりと覆えるのだが、夏はそれでは暑すぎる。たすきは、Tシャツをほどいて、ゆるく鎖編みしたものを使っている。長時間使っても疲れない。これを台所や、玄関に置いてある。荷物が来たら、まずたすき掛けしてしまう。

履物はふだん履きは下駄。お出かけは草履。どちらも足袋を履いている。下駄でも足袋を履いていると痛くない。これはお好きなように。

九月になったので、一日一善と、お天気をみながら、着物を洗う。単衣なので、すぐに乾くが、一日二枚が限度。それ以上だと仕事ができない。自分のルールで、人様に迷惑をかけないようにして、着物生活を楽しむ。

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