【小説】偽幸の追求:「発端」part4


持ち物と戸締りを入念に確認し
春の家へと向かう

目的地に近づき、路地裏の角を曲がる時
取り乱した春と再会した

「〈ーー君〉!!」
「春! お父さんは?」 
「さっき家を出たばっかりで!
 もう来ちゃう!
 どこかに隠れないと!
 私が〈ーー君〉とのことを言わなかったら!!」

少し考える
とにかく時間が…

「そうだ、とりあえず僕のうちに来て!」
「うん…っ!!!」
「春!そこにいたのか!!!」

瞬間、春の父親と思しき男性が叫びながら
こちらに向かってくる。
父親とこちらの距離約50メートル

私は春ちゃんを抱きしめた


「え、〈ーー君〉? なんで」






私は彼女を







突き刺した







何回も






何回も
何回も
何回も
何回も







「は?」
父親は呆気に取られていた

雨が打ち付けていた
ただただ打ち付けていた
止まることなく
鮮血が溢れていた
冷たい雨水が
真っ赤な花びらを乗せていく

付けていた革手袋を側溝に投げ捨て
私は携帯に119を打ち込み
同級生が男性に襲われたことを伝え
地面に携帯を叩きつけ踏みつけた

少しの間のあと
父親は叫びながら掴みかかってきた。

「俺のぉ…! 俺のもんをよくもぉぉ!」
「あんたが殺したんだろう?」
「てめえは何言ってんだ! クソ野郎!」 

鈍い音が私の脳を揺らす。
何度揺れただろうか
意識が遠のく…

………

……

 …



気がつくと真っ白な天井が見えた
少し考え、状況を整理する。
どうやらここは病院らしい。

それからは事情聴取の嵐だった。

退院してテレビを見ているとふとニュースが流れた。

『女子中学生殺害事件に進展がありました。
 今日未明、福寿告春さん(15)殺害の罪で
 父親である福寿牽午(32)を逮捕しました。
 容疑者は普段から娘さんを虐待しており
 凶器となった割れた焼酎瓶から指紋が検出され
 逮捕に至った様です。
 同級生の少年に助けを求めた様ですが
 それも敵わず。
 容疑者はその少年にも酷い暴行を加えており
 少年は意識不明でしたが
 幸いにも命に別状はないそうです』



雲一つない快晴を

私はしばらく眺めていた

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