【小説】偽幸の追求:「覚醒」part3


「今日は糸井田先生はお休みなので急遽自習にします」
『よっしゃ!』
「各自大人しくしておく様にな」
「大丈夫ですよ、今日はうるさい遠藤もいないんで」
「そうだな」


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          4日間

       静かな自習時間は続いた

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その晩クラス全員の携帯に正体不明のメールが届いた
あるビデオが添付されて

大半が無視したが
興味本位で観た数人により
その存在は
火種を煽り大炎へと昇華させ
ある者は心を焦がし
ある者は身を凍らせた。


「おい昨日の動画見たかよ」
「みたみた、あれやばくね?」
「どう見ても糸井田と遠藤だよな」
「ていうかどういう状況だよ!
 意味わかんねぇ、古い教室?みたいな所だったよな」
「糸井田先生はキリストみたいになってるし
 遠藤は糸井田の右腕にナイフ刺してるしよ」

「おい、とりあえず席付けー
 昨日お前たちに届いた
 10分ほどの動画の話についてだが
 ある程度の状況はお前たちから聞いた
 とりあえずは
 遠藤君はご家族が行方不明届を出してはいる
 が、
 お前たちも知っての通り
 ただの行方不明ではないっぽい 
 何か手がかりや、ビデオにpart1とある為、
 またビデオが届き次第、それは観ずに
 今から書く刑事さんの連絡先に
 速やかに連絡する様に
 それから安全の為、今すぐ下校し
 外出を自粛してもらう、
 勿論だが本件はくれぐれも他言無用だからな
 以上」

あまりにも現実離れした現状に
呼吸さえも躊躇わせ
五感は固まり
不安と動揺は海底の様な冷たく暗い雰囲気で
教室の隅々までも
満たしていた。

           days2


そしてその晩もビデオが届く
案の定ビデオは誰もが観ていた
震えた声が画面越しに聞こえる

「こんばんは…遠藤治です
 僕は今まで沢山の人の思いを誇りを人生を…
 踏みにじってきました…
 もう僕は……」
「もう僕は一生こんなことはしません!
 神に誓います!
 ちかいますからぁぁぁ!!

 許してください! 許してください! 許してください! 
 許してください! 許してください!ゆるしてぇ…
 ゆるしてくださいぃぃぃ!!!………」
手に持ったナイフは弱々しくも祈る様に
磔になった糸井田の左腕を突き刺した
「ん”ん”ん”ん”!」

タオルで蓋をされた喉奥の奥の奥から
張り裂ける様な悲鳴にならない唸り声は
いつまでも観る者の耳に張り付いていた。

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