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【喫茶店 美来】5-3話『誰にも居場所はある』

厨房やカウンターで仕事をしている職員が止めない。すなわちまだ大丈夫ということだ。
きっと涼は今にも飛び出したかったはずだ。

急に、夏南美さんが
「今日は、塾はないです!」と働きたい理由を聞いた時より
大きな声で言った。

「夏南美!あなた、、、」と言葉を続けようとしたとき。
夏南美さんが「わたし、音楽が好きなんです。音楽に関係するお仕事に就きたいんです。勉強より、バスケットよりピアノが習いたいんです。」と堂々と言った。
「何言っているの夏南美!バスケも塾も夏南美がやりたいっていうからやらせているんじゃない。」

「ちがう!ママとパパが喜ぶから続けていただけ。でも、もう限界。自分の好きなことがしたいの。」
わたしは、「わかりました。採用結果は、また後日お知らせするので、お店にいらしてください。」
夏南美さんは、「自分の思いを伝えたぞ!」という晴れ晴れとしていた。

帰る間際、愛未が夏南美さんに何かを手渡した。
夏南美さんは、驚いた顔をしていた。
「もう来ませんから」と母親は、言って出て行った。
「また、いつでもいらっしゃい」


夏南美さんとお母さんが帰ったあと
愛未は、
看板をクローズからオープンにした。

その間に、
葵と涼が、お水が入っていたコップやおしぼりを片付けてくれた

中に入ってきた、愛未は
また、ギターを持って楽譜を見る。
「ありがとう。」とわたしがいうと。

「ごめんね、店長。大切なスタッフになりそうな子だったのに」と
申し訳なさそうに、こっちを見る。
「いえいえ、いいんです。想いが彼女とお母さんに少しでも伝われば」と笑顔で返した。
「愛未さんの想いも、夏南美さんに伝わるといいですね」というと
「何のことか?」ととぼけた様子で
また楽譜に、目を移した。

数日待ったのだが、夏南美さんがおうちの方と来店することはなかった。


そのあと、愛未は、動画サイトにいくつか「弾き語り動画」をアップした。
毎回の動画のサムネイルを描いたのは、優音くんだ。

愛未さんから優音くんに依頼をして、
動画をアップする日に、喫茶店に来て、二人でコメントを読んだり、次回の曲やイラストの打ち合わせなどをしていた。
時には、啓太くんも混ざって、みんなで和気あいあいとした空気が
喫茶店に流れていた。

ある日、愛未の「弾き語り動画」が
彼女にとって少しだけバズった。

そこで、葉月・雅治・大輔がある提案をする。

<続く・・>
©心空