大家という稼業(善悪の彼岸)
不動産を安く買いたい!
不動産を安く買いた~い!!
不動産を安く買いた~~い!!!
つまるところ不動産投資なんてどんな物件でもいいから「流動性がある物件」を「相場より安く」買いさえすれば、キャッシュフローとか税金とか考えるまでもなく、困ったらいつでも売れば儲かるだけなんだから負けようがない簡単な投資なのだ。
ところが、ほとんどの売主は高く売りた~い!と思っていて、ぜんぜん気が合わないので安く買えない。そこだけが問題だ。
いったいどんな時なら不動産は相場より安く買えるのか。
売主が高く売るよりも、急いで売りたいタイミングと事情というのがある。不動産が動く3Dと呼ばれるDebt(借金)、Devorce(離婚)、Death(死別・相続)による売却。ぼくはいつも楽待の検索ボックスの離婚と相続と売主瀕死物件の欄にチェックをいれて探している。ないけど。
物件概要書を取りよせて、謄本を取ってみたら相続したてで乙区がまっさらで借入がなかったりすると、ちょっとワクワクする。やっぱり自分で苦労して買った不動産よりも、いきなり相続した不動産の方がありがたみもないし、借入がなければ売れただけぜんぶ自分のお金になるから安く売ってくれやすい。
逆にSMTL&Fで無理くり借りてて、必死に室内に洗濯機置き場を作ってこぎれいにバリューアップしているような手慣れたエンド投資家が売主のやつはダメだ。一ミリも成長の余地もないし、残債割れで出血して売るような体力もない。IKEAのちゃぶ台と照明を置いた販売写真までご丁寧に自分で撮って、高く売りた~い気持ちがにじみ出てる。撤収ー撤収ー!
同じ不動産を幾らで買うかによって、クソ物件もお宝物件に変わる。
不動産取引はゼロサムゲームみたいなところがあって、売主の損失が買主の利益にそのままなるから、安く買いた~いと願っている不動産投資家はすべからくみんな潜在的に他人の損失や3Dの不幸を願っているゲス野郎ともいえる。
ぼくは不動産投資しようと思って鉄火場に立ったからには、もうプロもエンドもなく、そこに情報格差があろうと何だろうと投資は自己責任だと思っているんだけど、不動産は投資家の間だけで取引されるわけでないので、たまに自宅を売るお婆ちゃんとか、鉄火場に踏み入るつもりもないのに、巻き込まれてる人がいてそれは気の毒だと思う。
別に売り急いでいるわけでもないお婆ちゃんが大手仲介を信じてプロに任せたのに、信頼されているのをいいことにでたらめな査定額で買取業者に安値で卸されて、1.5倍くらいですぐ再販されているのをみると、ひどいなーと思う。思うけれど、ひどいなーと思うのと、業者ずるいなーぼくもお婆ちゃん食べてみたいと思うのとが半々くらいなので、どうもこれは純粋な正義感から来る怒りではないような気もする。
いつエンド猟師に狩られるかもわからない不動産ジャングルを生き抜くのにこちらも必死なのだ。athomeで値付けミスで安くでてる古屋付土地をみつけたらすぐに満額で買付を書くし、もっと高くてもこれ売れますよ!とわざわざ売主に連絡をとって教えてあげる聖人はいないだろう。
こういうことについて深く考えても答えがあるわけでないし、ひとつしかない不動産について、成立した価格に第三者が口出しすること自体傲慢なことかもしれない。取引は正しい。取引はいつだって正しい。
どこまでがセーフでアウトなのか。人によって線引きは違う。実刑になるかならないの境目まで善悪の境界をはみ出てくるガッツある人もいるし、あとでトラブルになったら面倒だとかなり境界の内側に線を引いてくれる穏やかな資産家もいる。
せっかく現れた売主が逃げるかもしれないのに、問題入居者がいることを正直に告げるべきなのか。買主が契約書を2通作ってくれと言っているけど協力してもいいのだろうか。三為業者が高く買ってくれるけれど、どうやらフラット35のなんちゃってでエンドに押し込むつもりらしく、自分が売った物件が不幸な人を生み出してしまうことになる。
自分のお金を賭けて不動産取引をするとき、自分がどこまでやれるのか線引きを問われる。遠目には白黒はっきりしていると思っていたのだけれど、自分のお金を賭けたとき、その境界線は一気にぼやけて見える。