見出し画像

卯月

空気清浄器を止めて
大きく窓を開ける
鈍色の雲が淡い縁どりをつけて
輝いている

空は高く
風はつめたく澄んでいるのに
家々は
固く扉を閉ざしている

ひとりきりで
近所の沼まで歩く
水面はメタセコイアの翠を反射している

誰もいないベンチに座る
また引き返して
女坂を上ってゆく


          初出 something32 2021年1月



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?