魂の抜け殻 第7章
発見
死亡推定時刻午前9時頃。第一発見者は元社員の吉田さん。吉田さんが会社に到着したのはお昼頃。たまたま道が混んでいたそうだ。会社に電話しても出ない。会社に着いたが鍵がかかっている。なのに電気がついている。おかしい…と思ったと言っていた。
父はその2日前から会社に泊まりこんでいた。“これから実行します 午前7時半”父の机に書き置きがあった。実行…それは “死”を選ぶ事。場所も書いてあった。吉田さんはその場所へ向かった。すぐに助けたいと思ったそうだ。だが、どうにもできない。警察に電話した。「そのまま動かさない様に」と指示された。息が止まっている事が解っていても、首に掛けられた縄をほどいてやりたかった…後から涙ぐんでそう言っていた。
吉田さんは最後まで父と仕事をしてくれた人だ。父の会社は友人と一緒に立ち上げた会社だった。その友人が吉田さんのお父様。吉田さんのお父様は病気で引退。この会社は息子の吉田さんが継ぐ予定だった。
社員は4月までに全て解雇されていた。事務所は3日後までの契約になっていた。必要な書類は個別に綺麗にまとめられていた。弁護士、税理士の指定、その連絡先も書いてあった。完全に“死”を意識していた行動だ。それでも最後まで父は迷った。“自己破産”か“死”か…。そして“死’”を選んだ。自分が死ねば会社で契約していた生命保険から1千万円の保険金がおりる。それを借金返済にあてるつもりだった。
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