魂の抜け殻 第3章

父と母


僕の両親は僕が小学校低学年の頃に別居をしていた。母は仕事をしていたので留守にしがちだった。姉と兄がいたので、一人ぼっちでは無かった。寂しくは無かった。父は近くのアパートに住んでいたし、会社も遠くは無かったので僕は父とよくご飯を食べに行った。進路の相談など父と話した。父とは手紙のやり取りもした。

母は仕事先の上司と恋仲になった。父の事を相談にのってもらったらしい。よくあるパターンの成り行き。僕はその母の恋人が嫌いだった。母は“母”では無く“女”だった。

両親に愛され無かった訳じゃない。だけど幸せでも無かった。末っ子という立場もあり、いつも何かを我慢していた。

僕は外見も中身も父によく似ていた。父がどんな方法で自らの命を経ったのか、どういった理由で選んだ事なのか、何となく父の中の黒い塊が見える様な気がした。



#小説




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