魂の抜け殻 第8章

無念である


実家に着いてまず父の部屋に行った。姉が言った。「家族宛に何も無いなんて哀しいね」僕はあまりそう思わなかった。父は家族に執着が無かっただろうと思ったからだ。そして母が言った。「一言相談してくれればね…」僕はこの言葉に憤りを感じた。“それじゃお前が何とかしてくれたのかよ!”もう一度父の部屋へ行った。ふと気になって箪笥の引き出しを開けた。“家族へ”実家の住所と母の名前が書いてあった。リビングへ行ってその包を開けた。

“無念である”

父は本当に無念だったのだろう。そして、老いていく自分が嫌だと書いてあった。自分が死んだ場合の事、死ねなかった時の事。ここにも弁護士と税理士の連絡先が書いてあった。

税理士と連絡がとれた。事情を話し、次の日の午後に会社で会う約束をした。母はパニック状態で話にならない。兄は仕事でどうしても休め無い。僕が税理士と会う事になった。

納棺は1日後の7月8日

通夜は3日後の7月10日

葬儀は4日後の7月11日



#小説


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