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カラチの山羊は救世主かもしれないと思った話

リビアに暮らし始めてすぐだったか、大家さんがBBQで歓迎してくれた。お肉は羊。お肉の部位ごとに味が違うらしく、これもお食べ、あれもお食べと奇っ怪かつ大きな骨付き塊を渡してくれるのだけれど、無限の蝿がうんうん寄ってくるうえ、お肉の匂いもパンチが強烈すぎて喉を通らない。それどころか、以来、リビア滞在中は羊の肉がほぼ食べられなくなってしまった。シェーブルチーズさえアウト、ミンチがスパイスたっぷりのシシカバブになっていればなんとかいける。結果、肉屋で羊肉を買ったこともない。

イスラム教では乳飲子の羊を食べることは禁じられていて、お肉はラムではなく大人のマトンだから味が強いんだと教えられた。日本に帰ってようやっとラムが食べられるようになったのは3、4年経ってからだったように思う。ラムもシェーブルチーズもむしろ好物、に戻ったところでカラチ生活がスタート。

やはりマトンは危険かと手を出していなかったのだけれど、BBQ屋でふと口にしてみたらすごく美味しい。全く臭わない。しかもお肉も小さめときているから、案外とハラムがゆるくて若いラムなのかなと思っていた、それにしては脂が全然ない。こんなところで羊が飼えるのかな、山羊ならそこら中にいるのになと思っていたところ、

やはり、山羊だった。


オレンジ色の毛は、「ヘナ」をされている

田舎のドライブインで、生きている山羊をシメてもらって食べたら同じ味だったので間違いない。パシュトゥン人のおじさんが確信を持って言う。羊の肉が欲しかったら、マトンじゃなくて「羊の肉」と言わないと出てこないと。

犠牲祭で供儀にするのも山羊。

でも本当に、ベトナムの山羊鍋や、沖縄の山羊汁のあの強烈な匂いとは全く別物だ。そして、耳が長い。去年のニュースで、パキスタンの世界一耳の長い山羊が話題になっていた。

あのクラスにはお目にかからないが、ウサギ並みあるいは、ウサギ越えくらいだったらその辺中にいる。市場のケージにみっしり入っているし、市街地に急に「山羊場」としか呼びようのない牧場?があるし、その辺中のゴミ捨て場に放牧されてもいる。食べるまで、玄関先につないで肥育?している人もいる。鶏がちょっと大きくなったくらいの軽い感覚でいるに違いない。

私が会った中でおそらく最長耳の方々

我が家でのBBQはこの山羊をにんにく醤油味で山羊チョップにするのが定番になった。日本人にも本当に食べやすい味で、大人も子どもも、みんな美味しいと言う。すごい、山羊。

その辺の草だの葉っぱだのばかり食べて、なんなら、ゴミの山を漁っているのに、美味しくなるなんて本当にありがたい。環境コストの高い牛肉脂身崇拝から、少しでも山羊に関心が向いたら何か変わるんじゃないかとすら思う。山羊を飼うと本当にいいことづくめだと言ってた方を思い出す。カチラ・クンディ(ゴミ処分場)の山羊たちにも会った。市中で人と動物が欲しいものを拾い尽くしたゴミが運ばれてくるここですら、餌を探して生きている山羊たち。マンゴーのタネを噛み砕こうとする山羊にある種の神々しささえ感じる。

カチラ・クンディにて。奥に、モフモフ系のもいる。山羊? 羊?

この耳なが山羊たちはおだやかな性格のようだ、暴れるオスも見たことがない。黒目がちょっと丸っこくて、日本でよく会う目の中がマイナス!? みたいな顔とは違う子もいる。インドの山羊もこうなんだろうか。イランや、イラクは? 山羊の種類ってあまり考えたことがなかったなと思う。そもそも、たまにモフっとした感じの山羊にも会うし、羊との境目がとても曖昧。

この方は、きっと羊


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