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あぁ、夏休み

 夏休みと言えば、すぐに思い浮かぶのは、私が小学校のSC(スクールカウンセラー)を始めたころの話しです。

 学校の先生方は忙しく、夏休みは唯一と言ってもいいぐらいの、連続した休みがとれる時期。多くの先生方が、帰省やら旅行やらに出かけていることを知りました。

 そして、同時に、夏休み前のあのワクワクとした期待感に満ちた学期の終わりには、「夏休みはどこに行くの?」なんて会話が学校中に飛び交っているのを見聞きしました。
 
 当時から、出不精でもある私は、夏休みだから遠出をするという発想があまりなく、まるで、どこかに泊まりに行く事が当たり前のようにされる質問や会話に驚きを隠せませんでした。そして、そういう会話があふれる教室の片隅で、表情を曇らせる子がいることに気づいたのもこの時です。詳しいことは分かりません。もしかしたら、お家の人は、お仕事で長い休みなど取れないくらい忙しいのかも。ただ、きっとこの夏休みに、どこにも出かけたりはしないのだろうということだけは、私にも分かりました。

 集団生活の中での、何気ない会話。その中でさえ、自分と周りの子は違うのだという、いかんともしがたい事実に気持ちが暗くなることは、幾らでもあるのだと思いました。そして、マジョリティ側の人たちはそのことに、まるで気づいていないように見えるのです。
 
 そんなことに気づいてから、私は、子どもたちに夏休みのことを聞くときは

「夏休みどこかに行くの?」

ではなくて、

「夏休みはどう過ごす予定なの?」

とか

「夏休みの予定はある?」

という聞き方をすることが多くなりました。少なくともどこかに行く事が前提では無いように聞こえると良いなと思いながら。そして、どこかに出かける予定がある子は、その話を幾らでも出来るように。また、どこにも出かける予定が無い子が、その不満を述べるきっかけになるように。家で好きなだけゲームをする予定だと、胸を張って言えるように。
 
 ああ、あと、夏休みの宿題の話を聞くのは、私はけっこう好きなのです。出来ていても出来ていなくても、そこに色々な思いが乗っかって、話しをしてもらえたら。重すぎる宿題が少し軽くなってくれたら良いなと思ったり。話題に出したせいで、すっかり暗い雰囲気になってしまうこともあるけれど。一人で抱えるよりはきっと、一緒に抱えることで、何か変化があるはずです。
 
 そんなこんなで、子どもたちの夏休みあと三週間と少しほどになってきました。日が過ぎるのは早いですね。この夏も一度ぐらいは、私もプールに行けたらよいのだけれどと、思いながら、そろそろ筆を置こうと思います。暑い日が続きますが、お身体にはお気をつけて。
                      (K.N)

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