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旦那が死んじゃった(4)

もう2度と旦那が運転する車に乗れないのか。

娘が産まれてからは、チャイルドシートの横に私が座るのが当たり前になって、助手席に座ってドライブできた事って今考えるとすごく幸せな事だったんだなぁ…

社宅から私の実家までは同じ県内だが40分ぐらい。実家の道は狭く、車の置き場所がないので、車は私の兄が社宅に置いてきてくれた。私より10歳年上でバツイチで頼りないと思っていたが、こんな時に兄がいて本当に助かった。有難い。

昨日まではこんな事になるなんて思ってもみなかった。ネットで色々調べてみると、旦那と言えども亡くなった人の通帳からお金をおろせないようになるから、旦那名義の通帳のお金は全部現金にしておかなくてはいけないという事がわかった。ATMでおろせる金額は1日50万円が限度だから、少しづつ毎日おろしていく事にした。旦那の転勤で県外の銀行に預けていたお金は、全部定期預金を解約しておいて良かった。問題は車だ。旦那の名義の車、今突然亡くなってしまったら、旦那のお兄さん、海外赴任してるのに戸籍の何かを取り寄せてもらったりしなきゃいけないらしい。わざわざ帰国してくれないといけなくなる。

ディーラーに電話して、事情を説明し今すぐ、車を売りたいと連絡すると、中古車を取り扱ってくれる方に連絡をしてくれ、なんとかその日のうちに車を買い取ってもらえそうだ。印鑑登録証や車検証や戸籍を取り寄せなくては。車検証や戸籍は実家の市役所で大丈夫そうだけど、印鑑登録って、引越ししてきた時カードに登録してたっけなぁ??

あれ?

なんか引越ししたその日に市役所行ったけど私その書類書いた記憶ないよ?

とりあえず車検証と戸籍。兄の車に乗せてもらって戸籍はすぐ揃った。土砂降りになってきた。そのまま社宅のある市役所へ連れて行ってもらう。ものすごい雨だ。

旦那は思えば雨男だ。

海外出張にいく日も帰ってくる日も決まっていつも雨だった。

印鑑登録のカード、ちゃんと登録してたっけ?

あー、ドキドキする。暗証番号なんだろ?

…多分…

「印刷を終了しました。」

機械がピーとなって印鑑登録証が出てきた。

やった!!ちゃんと旦那があの日登録してくれてたんだ!!

ありがと!印鑑登録証をBUMPのリュックごと抱きしめて市役所の外に出ると雲の間から光が差し込んでいて、美しく、忘れられない光景だった。

暗証番号は、私の誕生日だった。


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