影法師から目をそらさずに(第4話)

(第四話)

涙を流しながら

自分の影法師を踏みました

踏めるんだね

泥の中に蓮の葉が育つように

僕は君に押されて泥の中で君の胸に抱かれた

君の涙が僕の涙に混じって

ああ

これが僕の求めていたものなのかなと思えて更に泣きました

小さい頃は涙は冷たいと思っていました

でも本当は涙は暖かかったのですね

変な話ですが

まるでお風呂に入っているようでした

子供の頃入ったお風呂

涙のように暖かかったです

お風呂の中で泣いたこともあります

自分の顔を湯船に映しながら

涙と一緒に顔をつけました

影法師の向こうに君の笑顔が見えました

そこに朝陽がギラリとさしました

とてもきれいな朝陽が君の横顔をうつくしく

美しく照らしました

お世辞ではなく

観音様かなと思いました

明け方の太陽は

今度は僕を照らしました

朝陽の中で目が醒めました

影法師を踏んだのはどうやら自分の明け方の夢だったようです

観音様は消えてしまいました

明け方の夢は正夢になるそうですね

それを信じてまた生きていくよ

影法師を踏めることを信じて……

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