不動産鑑定士短答式試験対策/鑑定理論正誤問題(出典:実務指針)

はじめに

はじめはTwitterで始めた企画でしたが、結構興味をもってくれた受験生もいましたので、これまでの問題と今後の問題を記事として集約しておきます。

主に「不動産鑑定評価基準に関する実務指針」(日本不動産鑑定士協会連合会)から鑑定理論に関する以下の文章読み、正誤を回答いただくというシンプルな企画です。

以下問題文(最終更新R2/7/24)

定期借地権評価において土地残余法を適用する場合は、定期借地権に帰属する純収益を有期還元して求めた価格から将来の建物取壊費用の現在価値を控除して求める。その場合の利回りは、旧法借地権及び普通借地権であった場合の利回りより低くなる傾向がある。(解答:実務指針189ページ)

定期借地権で賃料差額還元法を適用する場合においては有期還元法を採用し、将来の建物取壊費用の現在価値を控除して求める。(解答:実務指針189ページ)

取引慣行が未成熟である定期借地権については、一般的に借地権割合法を適用することは難しく、適用する場合においても試算価格の調整において、旧法借地権及び普通借地権の借地権割合から求めた価格を参考にする程度にとどまるものと考えられる。(解答:実務指針189ページ)

借地権設定者が借地権の併合を目的とする売買に関連する場合については、借地権の存する土地が完全所有権に復帰することとなり、当該土地に増分価値が生ずることとなるので、第三者が介入する余地がなくなり市場が相対的に限定されることから常に限定価格となる。(解答:実務指針195ページ)

前払地代がある場合の定期借地権価格は、未経過前払地代の別途精算を前提とした価格となるが、実際支払地代が同じであっても未経過前払地代ばない場合の定期借地権価格と比較して上昇し、底地価格は減少する。(解答:実務指針189ページ)

定期借地権が付着する底地の収益価格は、原則として直接還元法(有期還元法:インウッド式)とDCF法のいずれかを適用又は両者を併用して求めることが適当である。ただし、借地に係る契約上の残存期間が相当期間(例えば50年以上)である場合には、収益価格に占める復帰価格の割合が非常に小さくなることから、永久還元法を適用して収益価格を求める方法もありうる。(解答:実務指針197ページ)

土壌汚染調査の結果、対象不動産の近隣に土壌汚染対策法の形質変更時要届出区域の自然由来特例区域に指定されている土地があり、自然由来の土壌汚染が存する可能性は否定できない。当該汚染物質は、地質的に同質な状態で対象不動産の近隣地域周辺に分布していると考えられ、近隣地域及びその周辺地域の取引事例等の分析等から当該土壌汚染によるリスクは取引価格に織り込まれていると判断されるので、対象不動産の最有効使用(現行用途(工場)の継続)も勘案し、土壌汚染が存する可能性については特段の減価要因とはしなかった。(解答:実務指針56ページ)

継続賃料の総合的勘案事項の「契約の内容及びそれに関する経緯」に関して、地代は建物の投下資本が大きい分、家賃に比して既契約の拘束力が強い点に留意する必要がある。(解答:実務指針255ページ)

継続賃料の総合的勘案事項の「土地価格の推移」「土地及び建物価格の推移」に関して、概して、地代は元本(土地)価格の変動の影響が小さいが、家賃は元本(土地・建物)価格変動との関係性が高い場合もある点に留意する必要がある。(解答:実務指針255ページ)

継続賃料の総合的勘案事項の「公租公課の推移」に関して、費用に占める公租公課の割合が家賃の場合には低いため影響は小さく、地代の場合は割合が高いため影響も大きい点に留意する必要がある。(解答:実務指針255ページ)

内覧の全部又は一部の実施について省略することができるのは、再評価の鑑定評価の価格時点が、内覧を行った直近の鑑定評価の価格時点からおおむね1年以内の場合に限るものとする。(解答:実務指針65ページ)

原価法の適用において、土地に帰属する付帯費用について、土地価格に比して些少であり、土地価格に含めても価格形成に大きな影響を与えないと判断できる場合には、それを説明することによって、付随費用について減価修正を行わないことができる。(解答:実務指針137ページ)

複合不動産に原価法を適用する場合、敷地が借地権であるときは、借地権価格を求める過程で契約減価と建付減価を考慮する。(解答:実務指針124ページ)

貸家及びその敷金の積算価格と鑑定評価額(収益価格標準)との間に開差がある場合、建付地価格を配分する方法(控除法)で求める際に、当該開差のうち建物等に帰属する部分を適切に反映させた上で建物価格を求めなければならず、建物価格を建物の原価性からのみ求めてはならない。(解答:実務指針164ページ)

収益還元法は基本的にすべての不動産に適用すべきものであるが、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等から典型的な市場参加者の価格等の判断に与える影響が著しく僅少であると判断される場合には、必ずしも適用を求められるものではない。(解答:実務指針111ページ)

不動産と認められない(建築が完了するまでは登記の対象とならない。)状態である建築中の建物について、建築中の状態を所与としての評価を行うことは基準に則った鑑定評価の対象とはならない。(解答:実務指針15ページ)

基準各論第3章適用の鑑定評価を行う場合には、より精緻な鑑定評価が求められるため、市場分析により把握した市場の特性にかかわらず適用可能な鑑定評価の手法の省略はできない。(解答:実務指針107ページ)

借地借家法38条の定期建物賃貸借契約がなされ、かつ、同条7項の賃料特約が設定されている場合は、借地借家法32条の適用が排除されており、継続賃料の鑑定評価を行うための法的請求権は認められないが、想定上の条件を設定すれば、継続賃料の鑑定評価は可能である。(解答:実務指針219ページ)

賃貸事業分析法(新規地代の手法)により求められる土地帰属純収益(借地権設定者に帰属する純収益)は、土地残余法(更地の手法)により求められる土地帰属純収益に比べて一般的に低くなる。(解答:実務指針202ページ)

賃料自動改定特約のある契約を締結し、その後数回当該特約により賃料改定されてる場合、直近合意時点は、価格時点からみて直近の自動改定時点である。(解答:実務指針221ページ)


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