今後求められる責任あるスタートアップ
先週聞いたBig Technology Podcastの 'Why Venture Capitalists Are Mad, With Bloomberg Beta Venture Capitalist Roy Bahat’ が興味深かったのでノートに書き留めておきます。この回は、Bloomberg BetaのヘッドであるRoy Bahatとのディスカッションです。
話題の1つは、最近のテック企業に対する規制の強化によりテック業界全体が若干悲観的になっているのではないか?というものでした。Royの見立てでは、テック業界で働く人の多くが間違った期待値で業界に入ってきていることが理由の1つだとしてあげています。
テック業界は、最初の25年は半導体、ディスプレイやネット接続などのインフラ面を構築し、次の25年はそのインフラの上でビット(デジタル情報)を動かした。そして、その次の25年(これが現在にあたる)は、ビット以外のもの全てを動かし始めた。そして、ビット以外のものを動かしだすと、これまで以上に実際の社会の仕組みや自社プロダクトが作り出すであろう結果に関してよく考える必要がある。例えば、Googleの検索で失敗して人が死ぬ可能性よりも、Airbnbの宿泊先で殺人が起こる可能性のほうがはるかに高い。
一方で、テックスタートアップの成長を支えてきた以下の4つの考え方がテック業界の外の世界との軋轢を生む原因となっています:
① Tech is indifferent to norms - ファウンダーが元オタクである場合が多く、いわゆる常識に興味が無い場合が多い。
② Hyper obsession of focus - フォーカスすることへの異常なまでの執着。フォーカスしていること以外は関係無いという思考。極めてエンジニア的な考え方。
③ Focus on Optimization - 最適化による問題解決。
④ Obsession of Speed - スピードへの執着。
つまり、現在の様々な軋轢は、ビット時代のやり方を実世界のプロダクト開発にそのまま踏襲し過ぎているために起こっているのではないか、というのがRonの主張です。
そして、現在起こっている軋轢を解決するために2つの方法が考えられるとRonは、言います:
A 新しい世代の起業家の台頭。これらの企業家は、参入する業界の仕組みや自社が与える影響について創業間もない時期からよく考えている。
B テック企業で働く従業員の活動。例えば、Amazon社員による同社の環境問題へのスタンスへの抗議、Google社員によるペンタゴンとのAI関連の契約更新への反対などがあります。
弊社が投資を多なっているAIスタートアップも、プレイバシー、透明性、雇用確保といった面で疑いの目が向けられる可能性が高い分野でもあります。各スタートアップが与えうる影響についてもよく考える必要があるなと改めて気付かされました。