子どもの学費の話(歯学部)
子どもが3人いる
女、男、女
既に皆社会人となり、上と下の娘は結婚し、子どももいる
長かった子育ては今思えばあっという間に終わったような気がするが
何しろ「お金がかかったなぁ」と感じる
幼稚園時代からのことをアレコレ書けばとんでもない長文になりかねないのでザーッと省くがとにかくなんだかんだと3人分お金がかかった
夫は開業歯科医
そう言うと大抵の人からは「稼ぎが多いでしょ、イイね」と言われがちだが
20数年前に新築したクリニックの土地代、建物代、器械等の設備投資により多額のローンを抱えていた(その頃一番土地が高かった)
もろもろ合わせて1億弱
何が大変って、まず返済期間が15年以内だから月々の返済がキツいキツい
おまけに結婚した時に構えた自宅マンションのローンもあった
いやらしい話、毎月それなりの収入はあるが、かと言って決まった額が入るわけではなく、月々結構な波がある
人件費、材料費、いくつものローンを抱え、毎月、毎月、目の前をお金が入っては出て行く、そんなイメージしかなかった
私たちの生活そのものは派手ではなく、質素に暮らしていたと思う
プライベートで海外旅行に行くこともなければブランド物を買うこともなかった
(私がブランド物に興味がないこともある)
もしものための生命保険や休業保障掛金、器械、火災、地震保険料などの出費も多かった
当時の悩みでもあったが月々に決まった額の貯金というのはなかなかできなかった。
せめて学費の確保をしなくてはと思い、子どもが生まれてすぐ、学資保険を1人につき2つかけた。
それだけでtotal月10万近くになっていたと思う
サラリーマンと違って、決まった給料、ボーナスはないのでこれだけは!という気持ちだった。
とはいえ
私は決して教育熱心ではなかった
自分も医療職だったこともあり、とにかく資格のある仕事についてくれたらいいな、と思っていた
もちろん、好きな仕事であれば何でもいい、とにかく将来働ける子になってほしいと思って育てていた。
今時ではないかもしれないが、学校には休まず行きなさい、登下校は自分で!送り迎えは基本しない、というポリシーがあった
自分が親からそう育てられたから子どもにも同じことをしていた。
こんな意見は賛否両論あるだろうが、学校生活は脱線せず行ってほしいし、そうできればその後も何とかなる、そうできるようサポートしたつもりだ
幸い子どもたちは皆不登校などにならなかった
結果的には
娘たちは2人とも県外への進学は希望せず、地元で専門職を目指して進学をした
問題は息子だった
夫は2代目で、息子がもし歯科医になれば3代目となる
小さい頃から夫の実家からは息子に歯科医になってね、という圧はかかっていた
けれど、私たち夫婦としては強制するつもりは全くなく、自分の好きなようにすればいいと思っていた
息子の成績はそこそこ悪くなかったが、とても国立の歯学部を目指せるほどのレベルではなかった
高校2年の時の進路相談で、担任から息子が歯学部を目指すと言っていると伝えられた
家では特にそんな会話はなかったので、ただ単純に驚き、嬉しく感じたが、さあ、問題は学費!
どーなるんだ?ととても心配になった
それから調べまくったが、国立歯学部と私立歯学部の学費の違いにのけぞった
国立歯学部は普通の国立大学の理系の学費と同じだが、私立歯学部は大学により多少の違いはあるが、だいたい6年間で3000万強かかる
普通の新築の家一軒建つ程だ
話せばまた長くなるような紆余曲折がありつつ、結局息子は東京の歯科大に入った
入学金、
授業料、
その他教科書代やら実習材料代やらで、初年度の納入金は1000万弱かかった
その後毎年の授業料が年間400万以上
6年間で合計3000万強になる
もちろん、アパートの手配、家賃、生活費もかかる、それらの計算をするとそれだけでも在学中にtotal1000万近くかかることに
歯学部は基本朝から夕方まで授業があり、課題やテストも多く、評価判定も厳しいのでバイトをさせるのは厳しいという
そんなことをしていたら留年しますよ、と入学時にガツンと言われる
実際学生の2割程度が退学や留年をしていた
もうすでに国からの圧力で歯科医師を減らすという策が始まっており年間3000人以上の歯科医師国家試験受験者の内、合格LINEは2000人だという話にも驚いた
大学入学時、学長から現在歯科界がいかに厳しい試練に晒されているか、今や各歯学部は鎬を削り国家試験対策に講じており、かつて必須だった病院での実習がかなりおざなりになっていることも知らされた
大学によっては6年生になるとほぼ国家試験のための授業しかないと言うのだ
何だか大変なところに息子を入れてしまったなぁという後悔もよぎったが
親が思う程クサクサしているでもなく、部活にも入って何となくそれなりに楽しそうな学生生活が始まったようだった
学資保険でおりたお金はそれぞれの子どもの通帳に貯めていたが、とにかく息子の学費のために娘たちのためにプールしていたお金もかき集めて使った
3人分のこれまでの学資保険、なかなかの額だったが、息子の大学2年間でほぼなくなってしまった。
それからはまたローン。
いったいどれくらい借りただろう
当時、息子の同級生たちを見てると、金持ちの子だらけだった
私立の歯学部とはそういうものだろう、医学部も同様か
住んでいるマンションもまるで違い、新宿の祖父名義のマンション に住んでるとか、姉ちゃんと一緒に2LDKのマンション に住んでるとか、まぁそんな話ばかりだった
親や祖父母の経済力がなければこんな学部なかなか入れない
ウチなんてホント無理くり入ったようなものだ
それでも何とか息子は卒業し、既に歯科医師として働いている
(実は去年の春にやっと全ての借金を返したところだが)
先日、今年の国家試験の合格発表があった
やはり例年通り合格者は2000名LINEといったところだった
歯科医師を減らす目的のこの策は果たして今後どう影響するだろう
本当のことを言えば歯科医師は今後足りなくなると思う
例えば定期的に歯科医院にてメンテナンスを受けている人がどのくらいいるか、という点から考えてみたら分かりやすい
20代、30代で「痛くもないのに歯科医院に通う習慣がない」と平気で言う人が大勢いる
自分や自分の周り、定期的にメンテナンスに通っている人はいますか?
痛くなったり、腫れたり、噛めない、詰め物が取れた、欠けた、など不都合が起きて受診する人がまだまだほとんどなのだ
折りしも国民皆歯科健診の実現が近いと言われるが、年に一度健診するだけではなくきちんとしたメインテナンスを受け続けなければ大抵の場合、歯はやがて失う羽目になる
皆、体調を崩し具合が悪ければ仕事を休むが、歯のメンテナンスの為に休んだりしない
大きな問題だな、と思う
小さい頃からメンテナンスを受けた子どもは成長してもメンテナンスを受けるようになる
これは一つの大きな傾向で、かなりの確率だ
治療を繰り返していない天然歯の方の笑顔はとても素敵だ
できるだけ自分の歯を残す
長い人生を支えるために必要な歯を健康に保つためにはぜひとも歯科医院にてメンテナンスを受けてほしい
学費の話から脱線したが、歯科医師は決して過剰ではない
やがて、団塊の世代の歯科医師たちが廃業する時代がくる
まぁ とはいえ私立の歯学部の学費の高いのはどーにかならんものか!と強く思うが
これから歯学部に通う子どもを抱える方、特にウチのようにやっとこさ学費を払えるかどうかのギリギリの方にはイヤな話だったかもしれないけれど、覚悟して、頑張って欲しいです!
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