ジャムセッション

最近は実に多くのジャムセッションが開催されている。
かつてはジャムセッションと言えば通常のライブのない日に曜日を決めて行われるものだったのが、現在ではジャムセッションをメインに営業しているお店も多い。
ジャズが聴く音楽から演る音楽に移り変わったことを端的に表している。

かくいう僕もそういったお店でセッションホストを頼まれることがある。
そこでいつも気になるのが自分に期待される役割は何か、ということ。
ジャムセッションといえば、演奏が最低限成立し、かつ参加者の少ない楽器、すなわちベーシストがセッションホストとして呼ばれることが多く、それは運営上とても理に叶うもの。
その次がピアノでその次はドラムになるはずなのだが、ハイエンドアマチュアプレーヤーにおいて高度なハーモニー知識のいらないドラムはかなりの人口があり、またレベルも高いので、ドラマーをホストとするジャムセッションは少ない印象。

ではサックスはどうか。おそらく演奏人口の多いサックスがセッションホストとして呼ばれる頻度は管楽器の中では多いようだ。
しかし先程の条件で言えば、サックスはセッションを成立させる必要条件ではないはず。そればかりか、サックスがホストになるとそれだけ他のホーン奏者の出番を圧縮してしまうことになるので、本当に全曲吹いていいのかな、という気にもなる。

つまりセッションが成立する必要条件でもないのにコストをかけて呼ばれているのは、何か別の働きを期待されているはず。
たとえばサックスプレーヤーの自分がセッションに行くとすれば、目当ては素晴らしいミュージシャン、特にドラマーと一緒に演奏したい、からなんじゃないかな。
同様に、素晴らしいサックスと一緒演奏したいと思うドラマーなどのリズムプレーヤーもいるのだろうけど、興味深いことにサックスプレーヤーがホストを務めるときはサックスの参加者が多いとのこと。面白いものですね。
いわゆるビーバップチューンなどはホーン同士一緒に吹いてピッチ、アーティキュレーションやニュアンスを直に感じるというメリットはあるものの、テーマが終われば直接的な「合奏」はない。

思うにホーン奏者のホストに求められるのはいろいろな意味で「模範的な演奏」ではないか。すなわち、コールされた曲を譜面を見ずに、簡潔に、不安定になりがちなタイムをコントロールし(これは自分が吹いていないときは如何ともし難いので、同じ立場のホーンプレーヤーに向けたものなのだけど)、エンディングの交通整理をする、一言で言えば「さすがプロは大したもんだな」と思わせるのがホストとしての役割なんじゃないのかなと。これらは普段はほとんど意識していないことなのだけど、結果的には通常のライブでもそうなっているのだろう。

「聴く音楽から演る音楽になった」ものの宿命として「演る側になった者は滅多なことでは人の演奏を聴きに行かない」訳で、これは自分もそう。
幸いにもジャムセッションで知り合った方々の中には僕のライブを聴きに来て頂くこともあり、これは本当にうれしい。
今後もジャズに魅せられ居ても立っても居られなくなり、遂には楽器をはじめてしまったジャズこよなく愛する人々(僕もその一人)と「参加者とホスト」以上の関係を作っていけたらと思う。

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