見出し画像

地方開催から考える、東北人総イーグルスファンへの道

6/21、秋田県のこまちスタジアムで行われた5年ぶりのイーグルス主催試合。相手はファイターズで先発投手はあの吉田輝星選手。BIGBOSSも粋なことしてくれるもんだ。そんな特別な試合、わたしも気になって仕事を終え急いで帰宅しテレビの中継をつけたが「どっちのホームゲームだっけ?」というくらいの大きな拍手が吉田選手、そしてファイターズに送られていた。

さらに翌日6/22の岩手県営野球場での試合。島内選手の劇的なサヨナラ3ランホームランでこの球場でのプロ野球最後の試合に花を添えたが、現地に行った人からは大谷翔平選手や菊池雄星選手などイーグルス以外の岩手ゆかりの選手ユニを着た人がいた、という話が伝わってきた。

どちらも純正イーグルスファンからしたら「何それ!?」「ふざけんな」と言いたくもなりそうな案件。
毎年4月には東北の新小学1年生全員へのイーグルスのキャップの配布、東日本大震災を風化させず、東北から元気を発信することを目指した「がんばろう東北」デー、一軍二軍ともに東北6県各地での試合開催など、"東北"を名に冠しているからこその使命感と「イーグルスに親しんでほしい」という想いを持った様々な取り組みを行ってきた、球団の努力すら揺るがしかねない出来事と言ってもいいかもしれない。

どうしてそんなことが起きたのか、わたしには心当たりがあった。


2017/6/28。青森県弘前市にあるはるか夢球場で、青森県内では実に29年ぶりのNPB一軍公式戦が開催された。

はるか夢球場


青森で生まれ育ち、「高校野球こそ至高」と信じてやまなかったわたしが、就職を機に移り住んだ仙台でイーグルスに出会ってプロ野球の世界を知り、「故郷で初めてイーグルス戦が開催される」という事実に胸躍り、現地に乗り込んだあの日。

プレイボールの3時間半前に球場に着いた時点で「今日って平日だよね?」と言いたくなるほどの人人人。 外野自由席の開門待ちも既に長い行列になっていて、「いい場所・席のためなら早くから並ぶことも厭わない」花見やねぶたなどの夏祭りで鍛えられた県民性がいかんなく発揮されていた。
応援団よりも少しバックスクリーン寄りに陣取ったのだが、周りは初めて観戦に来たであろう家族連れがほとんど。後ろにいたご家族も銀次選手のユニフォームとMyHEROタオルを揃って装備していたけれど、声を出して応援するという感じではなかった。
「ここは関東のビジター球場で鍛え上げた声出し応援を…」とまでイキリはしなかったが、初めての観戦の人にも外野での観戦の雰囲気・空気感が伝わればと声援を送り、応援歌を歌った。
始めこそ配布されたバンバンスティックを思い思いに打ち鳴らしていたのが、回が進むごとにリズムが合ってきてどんどん一体感が生まれていく様はとても気持ちよかった。特にわかりやすかったと思われるウィーラー選手の応援歌でのシンクロ感は忘れられない。

このとき所属していた地元出身選手が細川亨選手。この日は先発出場し、スタメン発表時から大きな拍手が起こっていたし、7回裏の打席でヒットを打ったときも大盛り上がりだった。

たんげめぇ弁当

(プロデュース弁当も出張販売。もちろん買わせていただいた)


そう、東北人、地元に縁がある選手が大好きなのである。

この試合の翌日の地元紙でも大きく紙面が割かれ、観戦に来ていた細川選手の知人のコメントが載っていたし、いまだに「八戸学院光星出身のジャイアンツ・坂本選手」としてスポーツ欄では書かれているんだから、きっとこないだは「八戸大学出身の秋山選手がカープへ移籍」なんて報じられたのだろう。そう考えると先日の秋田・岩手での出来事にも合点がいく。

そして宮城とその他5県の温度感の違い。

シーズン中約70試合が東北一の大都市のターミナル駅近くで開催されていて、テレビを付ければ毎日のようにイーグルスの話題を目に耳にする環境と、年に一回一軍戦があるかないかではそりゃ差も生まれる。
「プロ野球がおらが町に来る」それが既に一つのお祭りみたいなもので、「イーグルスを応援しに行く」というより「テレビに出てるプロ選手が見れる!」という感覚の方が強いのが現状だろう。実際わたしも5年前の弘前で観戦した際も「娯楽の少ない田舎でも桜と夏祭り以外にもみんなで盛り上がれるものが欲しいよね!」「今日がいい思い出になった人が一人でも多くいればいいな」そう思っていたのだった。

タイトルに書いておいて何なのだが、東北に住む人皆が皆イーグルスファンになるとはもちろん思っていない。個人の趣味嗜好、スタンスや熱量に違いがあって当然だし、「多様性」が叫ばれている時代だ。それを理解していれば先日のこまちスタジアムにいた観客の行動に目くじらをたてることもないだろう。

とはいえ同時に、もっともっとイーグルスが東北の人たちに愛される、「おらがチーム」と思ってもらえるようになってほしいとも願っている。それは単に「東北に縁のある選手をスカウティングしろ」という話でもない。これまでもあった「プロへの憧れ」や祭りがやってくる高揚感と、よりチームや選手を身近に思う「親近感」をうまく融合させていった先に、真の"東北"楽天ゴールデンイーグルスとそのファンが生まれるのかもしれない。


いただいたサポートで球場で美味しいビールが飲めますありがとうございます(^^)