ほんとに「タイパ」いいですか?

みなさんは映画やドラマを2倍速で観ますか?
私は出来る限りナチュラルな速度で観たい派です。

すると若い子に言われるわけです。
「えっ、でもタイパ悪くないですか?」
タイパ…とは?おばちゃん、ググります。

「タイパ」=タイムパフォーマンス
かけた時間に対する満足度、という意味。なるほどね。おばちゃんは1つ新たな知識を手に入れた。

でもここを深掘りしたくなるのがおばちゃんの悪いクセ。
2時間の映画を、倍のスピードで観るのは「タイパ」なるものが本当に良いのか?ここで重要になってくるのが2時間の映画を「2時間で観た場合」と「1時間で観た場合」の満足度が同じものであるかどうか、という所です。

「タイパ悪くないですか?」と言ってきた彼女の中には「2時間で観ても、1時間で観ても、中身は同じでしょ?」という基礎的な考えがあるわけです。導かれる答えが同じならば、時間は短い方がムダがなく効率的。納得です。

ここからは元マスコミの「ひねくれおばちゃん」の独り言です。

「2時間で観ても、1時間で観ても、中身は同じでしょ?」
チッ、チッ、チッ。
そこが違うんだぜ、お嬢ちゃん。

映画とかドラマには、人の感情の「機微」を伝えるための様々な工夫が細部にされているんだよ。
例えば…
「あんたなんか嫌い!」ってセリフがあるとするでしょ。
それを言う時の「間」とか「表情」とか「抑揚」によって意味が全然変わってきたりするでしょ?

・本当に嫌いな場合
・本当は好きだけど素直になれない場合
・本当は好きだけどワケあって言えない場合 etc.

「キュンキュン」とか「切ない」とか「やりきれない」とか、いろんなパターンが考えられて、それを俳優さんや演出家さんなど作り手はほんの何秒かにその想いを込めるわけですよ。映画やドラマなんてその一瞬一瞬の渾身の表現の連続なんだから。目の動き1つだって、息を飲む緊張感1つだって、涙が頬を伝うタイミング1つだって、こだわってこだわってこだわって作品として世に送り出しているわけですよ。
そのこだわりを通常速度で観るのと、倍速で観るの、得られるものが同じだと思いますか?

あなたが恋人のためにスパイスからこだわって3日かけて愛情込めて作ったカレーを、スマホでゲームしながら食べられて「どうやって食べても味とか栄養とか一緒じゃねぇ?」とか言われたら「一緒な訳ねぇーだろぉー!」って発狂しませんか?
それと同じですよ。

じゃあ、通常速度で得られるものは何か?

私たちが生きている世界は今の所、倍速になったりしないです。(ドラえもんとかいない限り)そういう世界で私たちは他人という人間との関係性の中で生きています。ビジネスだって、家族関係だって、恋愛関係だって、全ては「対人間」です。意思疎通をしていく中で
どのくらいの「間」をとったら心地いいのか?
どんな「表情」をしたら伝わりやすいのか?
どの程度の「抑揚」が心を揺さぶるのか?
いろんな人間の「ケーススタディ」を見せてくれるのが映画やドラマなのでは、と思います。「こういう時にこんな感情になる人がいるんだ」とじっくり人間観察だって出来ちゃいます。「こんな言い回しをすると人を傷つけてしまうのか」と
自分が失敗する前に気付かせてくれたりもします。
つまり「人間を学べる教材」なわけです。

これ、倍速じゃ無理です。
作り手の情熱は通常速度でベストな状態で視聴者に伝わるように制作してますから。「間」や「表情」や「抑揚」などいわゆる「伝える」スキルを自由自在に使いこなすことが出来ればビジネスに落とし込むことで、集客だって、売上UPだって出来ちゃいます。だってそんな伝え方ができる人は「相手の心を掴んで離さない」から。

ほら、倍速で観るの、だんだんもったいなく感じてきませんか?

もう一度考えてみましょう。
あなたの「タイパ」は本当にいいですか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?