憲法・法務知財・スタートアップ
皆さん、こんにちは。CollaboGateの内田です。この記事は裏 法務系Advent Calendar 2023のエントリーです。プチセミナー「法務Room」で法務部のプレゼンス向上を試みたはるたろうさんからバトンをいただきました!
私は、憲法から大手メーカーでの法務・知財経験(専門:テクノロジートランザクション)を経て、今はスタートアップの世界でGTMとCorporateを担当しています。このブログでは、この異なる経験が私のスタートアップへの道をどのように築いてきたかをお話ししたいと思います。
憲法と法務知財経験からの出発
憲法との出会いと興味
法律を専攻する人の中でも憲法を専攻する人間はキャリア選択の観点から割と少ない方かもしれません。
かつ、憲法のなかでも、自分の専攻は憲法23条(信教の自由と政教分離)でした。
私は学部時代は法学部ではありましたが、政治理論のゼミに所属し、宗教が日本政治に及ぼした影響をテーマに論文をかいたりしていました。団体が政治に影響を及ぼしているという事実について学問的な興味を抱いたのです。
私は、就職活動はしてみたものの、就職するイメージをもてなくて、大学院進学を決めました。学部時代からの興味の延長線上にあるテーマとして憲法を選んだという流れです。
法務系の方はご存知の通り、憲法23条って、人の内心の最たるものである信仰とその表れである政治活動のガバナンス条文であり、すごく乱暴ないいかたをすればもともと分け難いものをむりやり分離するための基準について延々と議論する領域です。分け難いもののなかで特徴をとらまえて無理やりにでも審査基準を立てていくところが、自分には興味深くおもえたのでした。
大手メーカー法務知財でのテクノロジートランザクション
修士論文を執筆しながら、卒業後は社会に飛び出すことを考えていました。その際、社会での職種についてのリサーチを行っていた中で、当時専門職化が進んでいた法務の存在を知り、興味を抱きました。その理由は、私の父親が半導体技術者であり、常に「技術の世界では法律知識が本当に重要だ。アメリカでは専門家が活躍していて、すごいんだよ」と話していたことが、私の心に残っていたからです。日本でも同様の仕事が存在するのか、と思い、魅力を感じたのです。
入社後、幸運にも希望していたテクノロジートランザクションを担当する部署に配属されました。その後のサラリーマン時代は、NDAや共同開発からスタートアップへの出資まで、基本的にテクノロジートランザクションに従事していました。技術領域としては、半導体製造もろもろ、組み込みOS、画像処理・AIが中心でした。当時は、仕事をするなかで、社内クライアントであるエンジニアから最新技術について学ばせてもらえるのがとても楽しかったです。そして、難しくて複雑なテクノロジーの概念を紐解いてガバナンスを作り、契約の形に落とし込んでいく作業はとてもクリエイティブなことに思えました。そして、時に、保険をかけておいたのが功を奏したり、契約相手とのコラボレーションから新しい製品が生まれたりするのはとてもうれしかったです。
憲法とテクノロジートランザクション経験が与えてくれたもの
キャリアが浅い頃、正直に言えばなぜ憲法を専攻したのか、と悔やむこともありました。もっと直接的に企業法務に関連する会社法や契約法を学んでいたら、もっと楽だったかもしれないと思ったこともありました。それは、あくまでも学問的な経験であり、大学院を卒業してから最近まで、自身のキャリアにおいて活かせなかったことが残念でした。
一方で、テクノロジートランザクションに関わる中で、何千ものケースを経験する中で、処理の「型」を身につけていくことが自分の強みになっていったと感じました。そして、テクノロジートランザクションの仕事を通じて、業界内のバリューチェーンや技術革新に非常に興味を持ち始めました。法務の背景を活かして何か新しいことができるのではないかと考え、途中で米国LL.MとMBAを取得し、社内の転職のような形で経営企画やスタートアップ投資のチームに移り、いつの間にかアライアンスを担当するビジネス担当者として活動することになりました。
そしてその思いはスタートアップへ・・・と繋がっていきました。
スタートアップへの転機
外から見ると、計画的にスタートアップの世界に飛び込んだように見えるかもしれませんし、実際計画的に実施した面もありますが、実際には私の背景には、家族が中小企業を育ててきた姿や、自営業を営む親戚が多かったことが大きく影響しています。事業は私にとって身近なもので、いつか自分も父親のように事業を興したいという漠然とした思いを抱いていました。
ただ、20世紀の間に大人になった人間なので、テック系のスタートアップはリスクが高すぎて、自分には縁がないのかもしれないと考えていました。
しかし、2015年頃からスタートアップ界隈の敷居が明らかに低くなってきていると感じ始めました。いつか自分のチャンスが訪れるのではないか、そんな気持ちが徐々に芽生え、その思いが最終的には「やる」という決断につながりました。そして、波を待つサーファーのように、チャンスを窺いながら、波に乗るための試みを続けました。
多くの試みの中で、最初は大企業からアクセラレーターへ、その後アクセラレーターから自らの独立へ、そしてCEOである三井さんとの出会いへとつながっていきました。
異なる経験の統合
私は現在、IoT向けのData Infraを提供するスタートアップ「CollaboGate」でGTMとCorporateをリードしています。ここへ至り、憲法と大手起業でのテクノロジートランザクションの経験が結びつき始めています。
憲法がもたらした「視点」転換の型
スタートアップの世界はハードな挑戦が多いですが、相手の視点に立つことが求められる職業だと感じます。全員が満足することは難しい状況で、そこでの判断基準を考えることで、大学院時代の専攻と現在の仕事が繋がり、満足感を得られるようになりました。この気づきによって、ハードシップが気にならなくなりました。
「テクノロジートランザクション経験」のアップデート
GTMの活動において、長年のメーカーでのテクノロジートランザクション経験が大いに役立っています。お客様の担当者との親近感やメーカーのプロセス、カルチャー、バリューチェーンに関する理解は、私にとって重要なエンジンとなっています。
同様に、直接的には、自社の顧問の弁護士先生とのコミュニケーションを始め、取引の型の設計や顧客からの要望分析などの場面で法務経験が有用です。
データ/セキュリティ/統治機構
今後のチャレンジの一環として、セキュアで信頼性の高いデータの取り扱いは、憲法とテクノロジートランザクションの融合する分野です。会社が事業成長する中で、これらのガバナンス向上に貢献できるといいなと願っています。
サーフボード
異なる専門分野での経験が、私のスタートアップの道を形作ってきました。憲法も法務知財経験も、私にとってはサーフボードのような存在です。サーフィンでは、波に乗るために最適なボードを選ぶように、自分の経験も必要な時に適切に活用できるかが重要だと感じます。また、スキルや状況、時代によって、乗れる波が異なるように、経験もその都度適切に対応できるかが大切だとも感じます。
私の場合は、自らの興味を追求する中で、幸運にも、興味深い分野に出会えたと感じています。運は、サーフィンの波と同じように、自分のスキルや状況と合わせて掴めるものかもしれません。サーフィンで、自分が乗れる波乗れない波、タイミングも大いに関係するように、スキルや状況、時代によって掴める運があると思います。
これからも経験を意識して、「波」がきた時に乗れるように乗れるといいなと思います。また、乗れなくてもきっと楽しいんだろうなとも思います。サーフィンをするときのように。
憲法からテクノロジートランザクション、そしてスタートアップへの道のりを振り返りました。異なる領域での経験が、私の今日の姿を形作ってきたことの一端を共有することで、だれかの役にたてたのなら嬉しく思います。
というわけで、次はShigeki Yoshidaさんです!バトンを託しますー!
それでは今日もごきげんよう!
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