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会えない時代に大切にしたいこと「繋がりと自分の存在場所を感じられる」チームの存在

LINE青田さんからお誘いを受けて、2021年8月25日、以下の人事カンファレンスにパネリストとして登壇させていただいた。

テーマは「会えない時代に、それでも求心力を失わない組織とは?」

忘れないように、自分の中の気づきをメモしておく。

実は、このnoteはカンファレンス参加前に書いているもの(公開はカンファレンス後)。参加前にお題に対して先に自分なりの考えを整理しておき、
カンファレンス参加のBefore/Afterで、2回に分けて同じテーマで書いてみよう。
まずは、私自身の体験を通して、コロナ禍のユニリーバ・ジャパンで取り組んでいることを書いておく。(以降は、前提として私個人の体験に基づく見解である)

【ユニリーバ・ジャパンでの取り組み:働く環境】
ユニリーバは「Safety(安全)とWellbeing(心身の健康)」に対しては、世界共通で独自かつ高い安全基準を持っている。そのため、コロナ禍での対応も、人事として、一人の社員として、とても参考になる指針がたくさんある。また、ユニリーバ・ジャパンとしては、日本独自で2016年からWAA (Work from Anywhere and Anytime)  という制度を導入しており、社員がリモートワークが日常になっていたので、社員がコロナ禍での在宅勤務体制にスムーズに移行できた。

2020年3月、中国、ヨーロッパでの新型コロナウイルス感染拡大により、ユニリーバ社員が世界中で一斉に「Work from home」がスタートした。(業務上Work from homeが難しい、工場や外勤営業で働く社員の人は例外として引き続き職場で勤務している)
この時、グローバルCEOやCHROからのメッセージは「雇用形態に関わらず、ユニリーバで働く社員の安心安全を最優先にする」だった。(有事の時にリーダーが社員を安心させるメッセージを発信することはパニックを防ぎ少しでも早く変化を受け止めるようにするためにとても大切だと感じた)
日本の人事として、同時に今まで在宅勤務が認められていなかった派遣社員の方も在宅勤務ができるように各派遣会社とガイドラインを策定して実施したり、社員へのマスク配布、特別手当(工場や外勤営業で働く人たちのためのフロントライン手当、リモートワークで働く社員へのリモートワークサポート手当)なども行った。また希望する社員には、会社のオフィスの椅子の貸し出しも行うというユニークな取り組みもした。リモートワーク中の社員が安全な環境で働けるように、毎朝、社員が自分の働く場所と健康状態を会社に申告するサーベイも開始した。

ユニリーバでは、社員がオフィスに戻ることをReturn to Workplaceと呼んでおり、オフィスに社員が戻れるためには、ユニリーバ内でのいくつかの独自基準を満たしている必要がある(例として、R値1以下が2週間以上続く、オフィスの安全環境が十分に整っている、等)。2021年8月現在まで、日本ではまだWork from homeが原則となっておりオフィスに行くには事前の承認が必要という状況だが、Return to Workplaceに向けての準備はスタートしている。Return to Workplaceが決まるとその前21日間の準備期間があり、その期間で、上司がすべての社員の心理的な状況をヒアリングしたり、準備のためのトレーニングを実施したりする。

このReturn to Workplaceの準備として、社員の心理的な状況を4つのカテゴリーに分けて上司がヒアリングした結果がとても興味深かった。
(4つのカテゴリー)
①Cannot:できない
②Do not want:したくない
③Need:する必要がある
④Want:したい

結果として、一番多かったのは、②Do not want:したくない (Return to Workplaceよりも在宅勤務を続けたい)だった。その人たちの多くもさらにヒアリングすると「仕事上オフィスに行く必要がある時にオフィスに行く(③Need)が、理想は全ての仕事が在宅勤務でもできるようにしたい。その上で、100%在宅勤務よりは週1-2回はオフィスにも行きたい(④Want)。オフィスに行く理由は、オフィスのほうが集中できる、気分転換、人と会えた時に嬉しい、人と会って議論するときは対面のほうが効果的、等など」

私自身も今の仕事(Employee Experience) では社員情報を扱うため、私もチームメンバーも週1回程度オフィスに行く必要があるが、チームメンバー全員のオフィス出社予定を一覧で可視化しておき、お互いオフィスで声をかけやすいようにしている。会って挨拶するだけでも間違いなく本当にポジティブ感情が湧いてくる。


【ユニリーバ・ジャパンでの取り組み:コミュニケーション】

ユニリーバ・ジャパンでは、2016年からWAAという制度をスタートさせ、リモートワークという環境に慣れている社員が多かったので在宅勤務への移行はスムーズにできたと思う。とはいえ、コロナ禍になり、「コミュニケーションの重要性」を再認識し、コミュニケーションの仕方、話す内容などを試行錯誤しながら工夫し続けている。ポイントは『繋がりと自分の存在場所を感じられる』仕掛けをすること。特に、コロナ禍でオンラインコミュニケーションになると、今までオフィスで「気軽に」やっていた挨拶や会話が簡単にはできなくなり、人間関係での心理的距離を近くするためには、意図的に仕掛けとして作り出す必要がある。

具体的には、上司と部下、同僚、チーム、など、それぞれの対話の頻度・時間・内容を工夫する。頻度は多く、時間は生活リズムを尊重して、内容は仕事だけではなく雑談や笑いを入れる。


以下は、実際にユニリーバ・ジャパンHRチームで行っている事例。

①毎朝

HRチーム全員が入っているグループチャット、毎朝、仕事始めに朝の挨拶を投稿。その時に仕事と関係ない日々のできごと、つぶやき、自分の気分も投稿する。月曜日は最近撮った写真を投稿する。これは、スタートした最初の目的は、在宅勤務になり、毎朝の体調や気分をチームに共有するというものだったが、在宅勤務だと難しいON/OFFの切り替えに有効だと気づき、朝の挨拶で一人一人が「繋がりと自分の存在場所を感じられる」ようにしている。

②週2回
2020年6月からの取り組み。月曜日と木曜日の朝8:45-9:00、私と上司である島田由香さんの2人で「可能姉妹(Impossible --> I'm possible)」というユニットを作り、二人で仕事には全く関係ないテーマで、自分の体験や気分を話している。ここでは私と由香さんは上司・部下ではなく一人の個人として話したいことを話している。
HRチームメンバーの参加は自由。ラジオやClubhouseのように耳だけ参加ももちろんOK。これは、もともとオフィス勤務の時は週1回チームランチをしていて、そこでの雑談を再現できないか、と思い考えたこと。最初は在宅勤務スタートしてから週1回、オンラインでのチームランチ会をやってみたが、お子さんがいる方はランチタイムがむしろワンオペで忙しいという人もいてなかなか続かなかった。そこで「朝の時間、家事や育児をしながらでも耳だけ聞いて元気になる方法はないか」と思い、ラジオ型のトーク時間を作ってみた。

③週1回
チームメンバーとの1on1。在宅勤務前から行っていたが、在宅勤務スタート以降は仕事やキャリアの話を超えて、メンバーが話したいテーマで話を聴くようにしている。(結果として仕事の話が多くなってしまう、という事実は否めないが)

④隔週1回
HRチームメンバー全員参加で、部門担当役員から最新の会社の情報、特に新型コロナウイルス対策に関しての情報、などを伝え、参加者からの疑問や質問を聞く。これは、正しい情報を早く確実に伝えることで、複数の情報が混在せず不安を解消する、という点で効果的。

⑤月1回
HRチームメンバー全員参加で、チームメンバーのことを深く知る時間。最近では新しいメンバーが入ってきた時に、自己紹介とともにお互いの自分のパーパスを共有している。お互いのパーパスを知ることのメリットは、その人の価値観を知り相手との繋がり・心理的距離が近くなること。

【自分の体験から:約1年間のリモートワークを通して感じたこと、考えた事】

・働くことに関して、「時間」と「場所」の捉え方が変わった。個人の選択肢が増えた。

・会社が在宅勤務できる環境を作ることは、社員が働く場所の選択肢を増やすため、社員のモチベーションに繋がる。裏を返せば「会社に必ず来ること」を前提とする会社だと求心力が弱まってしまう。

・在宅勤務であっても「繋がりと自分の存在場所を感じられる」仕掛けを作ることで、不安を少なくし長く続けられる環境を作ることができる。その鍵はコミュニケーション(対話)の頻度・時間・内容。

・「繋がりと自分の存在場所を感じられる」ために重要なのが、チームの存在。このチームは必ずしも会社や所属組織だけとは限らない。自分自身がその中の一員だと感じられる、仲間がいる、と感じられるチームという存在があり、そのチームとのコミュニケーションが増えると在宅勤務でも他の場所のリモートワークでも不安は少なくなる。

・対面が非日常になり、対面でしかできない価値(人と会うことで関係性や繋がりを感じてポジティブ感情が湧く、等)が大きく上がった。

・対面の場であるオフィスの存在価値も変わった。今までの「席に座って仕事をする」ことだけではなく、対面でしかできない価値を最大にする場、つまり、コラボレーションとイノベーションを生み出す場へ。

・そして、これからはオフィス以外でのワーケーションもさらに加速する。



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