スカートについての一考

         スカートについての一考

   Yさんが「男の人に早くスカートをはいてほしい」と言った。なぜそんなことを言い出したのかはよくわからないが、たぶんそう言いたい気分だったのだろう。
 わたしは誰が何をはこうがどうでもいいが、スカートと言って思い出すのは、若いときにもっとスカートをはきたかったなあ、ということである。
 スカートをはくなと言われたことは一度もないが、はけない雰囲気だった。
 小学5、6年のころ、教室で机を丸く並べて授業をしていた。ある日向かい側に座った女子が、
「みきちゃん、パンツ丸見えや」
 と言った。
 わたしはスカートをはいて椅子に座っていたのだが、脳性マヒの不随意運動のため脚がひらいて、それが机の下から向かいの席の人に見えたのだろう。小学校高学年の特に女子というのは本当に口さがない。やがて誰かが、
「いやーん、わざと○○君に見せとるんか。やーらしい」
 と、たまたま向かいの席に座っていた男子の名前を持ち出してからかってくる。それはこの年頃の女子にとっては致命的なことだ。その時からわたしはスカートをはけなくなった。
 中学生になってもセーラー服の下はズボン。高校も正規の女子の制服はスカートだったが、もちろんズボンで通した。わたしだけでなく、ほとんどの女子がズボンだったので違和感はなかったが、時々普通の女子中学生がセーラー服のスカートをひらひらさせて歩くのを見ると、わたしもあんな風にスカートをはきたいなあと思ったものだ。
 最近、校則で女子はスカートをはかなければならないというのがあると聞いて驚いたのだが、スカートというのは女を活動的にさせないために作られたという説もある。その陰謀に乗るのは癪だが、それでもわたしは若いときにもっとスカートをはきたかった。
 もし戻れるならあの教室に戻って、思いっきりかわいいパンツをはいて「これ、見せパンっていうんやよ」って言ってやりたい。ついでに「わたしが好きなのはその子じゃなくてあの子なの!」とも、ね。

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