見出し画像

青梅の甘露煮といえば…日田市?

大皿に始まり小皿豆皿、すり鉢に鍋、鍋敷や靴べら…と、暮らしの中にある道具や器は毎日、そして長く使うものなので、できるだけ作り手さんの顔が見えるものを使いたい。
数多くはないが  用と美を求めて旅をし じっくり選んだ品々だから どれも深い愛着がある。
使いなじむうちに愛着が湧くというのはもちろんだけど
ピタッと 心の焦点が定まるものに出会うまでの、景色や 渡る風   作り手の姿 交わした言葉…  それらひとつひとつのかけらが愛着に塗り込められている。

そろそろ夏茶碗を出しましょか… と思い立ち、しまってあったものをいくつか表に出してみた。                        カフェオレ色に飛び鉋模様が乗せられた 小鹿田焼(おんたやき)。     陶工さんの思わくか そこに流れていたBGMは『田園のポルカ』。    小気味よい曲の拍子と 飛び鉋模様がが重なって 面白い! と迷わず連れ帰ったものだ。「今年もよろしく」と両手に包んでいたら もうひとつの日田の記憶が表に浮いてきた。 

小鹿田焼(おんたやき)の窯元を訪ねた折、 冷たいお茶と共に頂戴した青梅のおいしさに触れ、しつこく食い下がって 甘露煮の作り方を教えて頂いた。 口に含んだ途端にとろけ始める実と それを追うように広がっていく甘さ  酸っぱさ  かすかな渋み。                       「美味しい!!なんなんコレ!!」                    「当たり前のことを大きな声で言いなさんな」と 隣に座る相方に諭されようが辺りをはばからず口に出さずにいられなかった。           「今 教わらないと一生後悔する」                    作り方をなんとしても教わりたいと願い出た。元来、ひどい人見知りなので こうしたことができるたちでは無いのだけれど、自分でも面食らうほどの厚かましさで食い下がった。                      私の前のめりさに店主は「妻が作ったので…」と 後ろに引き、代わってご家族が丁寧に付き合ってくださった。手書きのレシピまで記して頂いた。   毎年 青梅の季節を迎えるたびに 今年こそ! 今年こそ!」と 青い実を手に入れては、手軽な梅シロップになったり、酵素になったり…       何度目の正直か… と自問しながら、インクの色が変わり始めたレシピを追いかけて 今年ようやく実現できた 青梅の甘露煮。秘伝のレシピは 美味しく受け継がれた。                          和歌山をはじめ有名所はいっぱいあるけれど私にとっての青梅の甘露煮といえば 大分県日田市なのである。