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ボス猫の役割

ハチワレくんと一緒にゴミ捨てに行く。
ハチワレくんはおしゃべり猫で、足元から私を見上げながらミャッミャッミャッミャッ話しかける。
足元を見ながら歩かないとハチワレくんの手を踏んでしまいそうになる。
「ハチワレくん、危ないから前見て歩いて。」
道路の曲がり角では
「車に気を付けて、端っこ歩いて。」
と声をかけた。
危ないことは人間にも猫にも危ないので、かける声も変わらない。 
ゴミ捨て場までの決まった道以外から戻ろうとするとハチワレくんが急に座りこんで動かない。
すこし先まで歩いても、決まった道なら追いかけてくるのに、追いかけてこない。そこに見えない壁があるように座ったままだ。
ハチワレくんのテリトリーではないことに気付いて、
「ごめん、ごめん。ちがうんだね。向こうへ戻ろう。」
とハチワレくんの元に戻って、いつもの道に戻る。ハチワレくんもミャッミャッ言いながらついてくる。
猫にはテリトリーがある。人間には、どこからどうなっているのかわからないけれど、一緒に歩くと見えない境界線が見えてくる。

そんなハチワレくんのテリトリーのボス猫はモフモフくんだ。
モフモフくんはこの辺りのボス猫さんだけれど、モフモフくんからケンカをしかけることはしないし、誰もモフモフくんにはケンカを仕掛けないらしい。

そんなモフモフくんが猫さんを追いかけるのを一度だけ見たことがある。
まだ段ボールハウスの頃だ。
明け方、ヴー!ファー!シャー!外から猫たちの声が聞こえた。飛び起きて、階段を駆け下りて、「モフモフくん!ハチワレくん!」ドアを開けた。
新参猫の後ろ姿がかすかに見えた。
ハチワレくんが怪我をしていた。
後ろ足の脇の毛がむしられて血が出ていた。

その日の夜、ハチワレくんが戻って来ないかわりに新参猫がやってきた。
いつものとおりモフモフくんがハチワレくんに残しておいたごはんを新参猫が食べようとしたときだった。
段ボールハウスからモフモフくんが出てくる気配を感じた新参猫は逃げたけれど、その後を、ものすごいスピードで追いかけていった。
モフモフくんはこんなに俊敏に動けたのかと驚くほどのスピードだった。
この頃、まだ爪切り前だったので、モフモフくんは手が痛かったのだと思う。
それでも、ハチワレくんを傷つけて、ハチワレくんのごはんを食べにきた新参猫を追いかけたモフモフくんの姿はとてもカッコよくて、確かにボス猫だった。

実は、この辺りにはもう一匹、ボス猫がいた。ボスはひとりじゃないの?とも思うが、猫ボラさん家の外猫さんだ。
やっぱりモフモフくんと同じようにフワフワの長毛猫さんだ。
猫ボラさんは自宅の敷地内に、このフワフワ猫さんとシロサビ猫さんのハウスを置いてお世話していた。
2匹はとても仲良しで、フワフワ猫さんはシロサビ猫さんを抱えるように寝るらしい。それを聞いて、モフモフくんとハチワレくんも同じハウスでと、大きな犬小屋を購入したのに、モフモフくんがイヤがったのだ。

猫ボラさん家近くのお宅が、地域猫たちのためにごはんを置いておいてくれている。シロサビ猫さんは、それを食べに行くらしいが、フワフワ猫さんは護衛でついていくと、猫ボラさんから聞いていたが、コロナ禍の朝、運動不足解消のために散歩をしていると、シロサビ猫さん護衛中のフワフワ猫さんに出会った。
本当に、ちゃんと道路に人間と車を確認していて、その後ろからシロサビ猫さんがやってきていた。
後から知ったが、シロサビ猫さんは目に障害があった。だからフワフワ猫さんはいつもシロサビ猫さんを守っていたらしい。

モフモフくんとフワフワ猫さんのテリトリーの境界線は不明だが、どちらのボス猫さんも、弱い猫さんを守ってた。
弱いものを守ってこそボスなのだ。
人間はどうでしょうね…


モフモフくんの爪切りのお話

犬小屋ハウスを購入したときのお話


マガジンNEKO
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




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